書音

□二人の休日
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01,温かな腕の中で目を覚まし

温かな温度を全身に感じながら勾陣は目を覚ました。
目の前には穏やかな寝顔を見せている騰蛇がいた。
少し寝返りを打とうと試みたが、思うように身体が動かない。
そういえば身体に変な重みがかかっている。
勾陣はそっと掛け布団の中を見た。

「………こいつ」

勾陣の身体の上には騰蛇の腕が乗っていた。
つまり、騰蛇は勾陣を抱き締めた状態で眠っているのだ。

「おい、騰蛇。起きろ」

身体を揺すってみても、上手く力が出ない。というか出しにくい。
どうやっても起きない騰蛇の鼻を摘まむ。

「…勾、何をしてる?」
「それは私の台詞だ。早く放せ、たわけ者」
「ん?あぁ、何で勾ここに居るんだ?」

本気で分かってないのか、きょとんとしている。

「取り敢えず放せ」
「嫌だ」

ここで素直に放せば苦労は無いのだ。いつもいつも。
更に腕の力を強める。

「いい加減にしろ。騰蛇」
「放したら寒いじゃないだろ。それに今日は休みだ」

にっと子供のように笑うその顔が勾陣は好きだ。
一度も騰蛇に伝えたことは無いが。

「まぁ…確かに」

そうやって結局いつも騰蛇の言葉を受け入れる。
惚れた弱味というやつだ。

「今日出かけるか?」
「突然だな」
「よし。じゃあ起きるぞ」

バサッと起き上がった騰蛇の所為で、勾陣の上から布団がなくなった。

「寒い」
「抱き締めてやるから起きろ」

両手を広げて座っている騰蛇を無視して勾陣は起きた。

End.
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