書音

□それは突然嵐の如く
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薄暗い部屋の中で、勾陣は眠っていた。
薄暗いといっても、カーテンの外ではもう日が昇っている。
夜遅くまで仕事をしていたため、睡眠時間はまだ足りない。
そんな勾陣の携帯が無情にも着信を告げた。
布団に入ったまま、携帯に手を伸ばし、切った。
そしてもう一度眠りにつこうとした時、また携帯は鳴り出した。
鬱陶しそうに勾陣は瞼を上げ、ディスプレイに表示されている文字を読んだ。
着信、騰蛇。
勾陣はまたしてもその着信を切った。
だがしかし、これで三度目だ。相手も分かっているらしくまた携帯は鳴り出した。

「…うるさいぞ」

まだ覚醒しきっていない頭を働かせて、勾陣は取り敢えず文句だけ言った。

『勾、今家か?!』

どこか焦っている騰蛇の声に、勾陣はそうだと答えた。

『今日は家から絶対出るなよ。それからテレビ点けろ、芸能ニュースやってるとこ』

勾陣は起き上がると、騰蛇に言われるままリモコンに手を伸ばし、局を変え始めた。
そして四度目に変えた局が、今からちょうど芸能ニュースを始める所だった。

「あったぞ」
『じゃあ見てろ。あ、携帯切るなよ』

勾陣がその番組を見始めてすぐ、本日のニュースの概要を書いたテロップが画面に表れた。

「なっ…!」

それを読んでいた勾陣が思わず声を漏らした。
おそらく騰蛇にも聞こえているだろう。
そのテロップに書かれていたのは、

モデル・勾陣に熱愛発覚!

というものだった。

「騰蛇、これは…」
『やられたな』

完全に覚醒した頭で、勾陣は窓に近づき、少しだけカーテンをずらし外を見た。
そこには餌に群がる動物のように、マスコミの記者達が集っていた。

「お前が出るなと言った訳はこれか」

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