書音

□特別なお菓子
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そうして無事例年通り仮装行列も終わり、
(昌浩が黒猫の格好をしてきた彰子に見惚れていたり、
紅蓮と六合の作ったお菓子はダントツで人気だったとか…
その辺りの話は置いておいたとして)
もう、間もなく10月も終わりを告げようとしていた頃、
例の企みを実行する為、紅蓮は勾陣の部屋を訪れたのだった。











「勾、」


「騰蛇か、どうした、何かあったか…?」


「……………」











まさか昼間のことが悔しかったから仕返しにきた、
などとは当然のことながら言えるはずもなく。
しばらく無言だった自分を怪訝に思ったのだろうか、
騰蛇…?
と小首を傾けて見上げてくる姿があった。
…可愛い。











「勾、Trick or treat,,,?」


「は?…昼間やったろう?」


「そうじゃない…俺にとってのtreatは…








 お前、なんだよ」











そう言って啄ばむような口付けをすれば、
頬を朱に染めながら、
戯け、
と一言返ってくる。
…あぁ、もう戯けでも何でもいい、お前が可愛いのが悪いのだから、
と、そんなことを思いながら、
今度は深くて、どんなお菓子よりも甘い、
特別なお菓子を味わったのだった。























大人にとってのHalloweenはまだまだこれから、










なぁ、勾、そうだろう?










Trick or treat...?










その言葉は始まりの言葉なのだから…
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