短い夢2

□もし、ドラマだったら……
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あぁ、今日の撮影が中止になってしまった……。
今日は某スタジオでドラマ『家庭教師ヒットマンリボーン』の撮影予定だったのに、監督の都合で中止。
マネージャーのあたしは当然それを担当の子に伝えにいかなきゃいけないわけで……、あぁ、気が重い。


『あ、レヴィさん。お疲れ様です』

「あぁ、お疲れ。今日は撮影が中止になったらしいな」

『そうみたいですね、これから皆に教えに行かないと』


我が事務所『ボンゴレ』に所属する子が多いから、あたしが連絡した方が早いんだよね。
ちなみにレヴィくんは『ヴァリアー』事務所に所属。結構厳しいベテラン俳優さんだけど、あたしみたいなマネージャーやスタッフさんにも優しい方。実はアラサーらしい。


「この髪型にするのにスプレー1本も使うのにな」

『そんなに使うんですか……』

「1本ですか、僕は貴方ほどじゃありませんね。半分で済んでますから」

『あ、骸くん。お疲れ様』


ニコニコ笑ってる骸くん。
うちの事務所に一応所属してる子だから少しは知ってる。
撮影中はすごく妖しい笑い方なのに普段は普通の子。駆け出しでも俳優さんってすごいよね。


「オイオイ、撮影まだかよ?」

『あ、ディーノ君。今知らせに行こうと思ってたんだけど今日の撮影中止になっちゃったんだ』

「は?中止?んだよ、それ」


は、はは……
相変わらずね、この子。役はすごく優しいイケメン王子様タイプなのに普段は不良系お兄さんです。スウェット着てますよ、スウェット。


「兄さん、ダメだって。困ってるじゃん」

「あ?なんだ、ベルか」

『お疲れさま、ベル君』

「お疲れ様です」


にっこり笑ったベル君。あぁ、なんて可愛いんだろ、まるで天使!!
役柄はとんでもない悪魔だってのに。


「ごめんごめん、兄さんが。オレから言っとくから許してやってくんね?」

『へ?』

「あ、ごめんなさい。オレ、役の格好とかしてると入り込んじゃって」

『あ、あぁ、そうなの……』


じゃなきゃあんな狂った演技できないよね、うん、納得。
最初この2人が兄弟って信じられなかったけど、未来編でのベル君の衣装合わせで見た髪形は若干ディーノ君に似てた。




「おっせぇぞぉっ!!」

『うわぁっ、ごめんなさいっ!!』


突然の大声にびっくりしてると後ろからスクアーロさんが違う違うと言ってくれた。
え、じゃあ何?なんて思ったその後ろから……、




『ザ、ザンザス、君……?』




息を切らしながらやって来たザンザス君。
なんか汗だく……


『お、おはよう』

「お、おはよう、ございます……、すみません、遅れて!!」

『あ、大丈夫。撮影中止になったから』

「え、そうなんですか……、よかった」


あの役からは想像できないくらい腰が低いんだよね、この人。確か一般人オーディションで大抜擢されたんだった。
そういえばスクアーロさんは事務所の先輩だっけ。モデル出身だからすごくスタイルいいんだよね。
本当は役ほど髪が長くないんだけど、ロングヘアーもすごく似合ってる。


「よくねーだろぉ!!お前新人だろ、遅れてくるなんざ10年早ぇ!!」

「す、すみません!!」


殴られたり蹴られたりしてる役やってるけど普段は立場逆転してるんだよね、この2人……
まぁ、スクアーロさんは優しいから先輩として言ってあげてるんだけど、あたしの担当の子だったら、




「新人のくせに遅刻とか何してるわけ?」




はい、きました、悪魔さま。
可愛い顔して怖いんだ、この子。


「す、すみません、綱吉さん!!」

「オレが新人の頃は1時間前には現場入りしてたけどなー?」

「す、すみません……」


いやいや、ツナ君が新人の頃ってまだ3歳くらいでしょ。お母さんに連れられて来てたって聞いたよ、あたし。


『ツ、ツナ君……、ザンザス君はまだ芸暦短いからね、その……』

「もしかして今日の撮影中止ってお前が遅刻した所為かもね」


あぁ、すごく可愛い笑顔なのにオーラがドス黒い……っ!!
これだからベテラン子役って嫌いなんだよ。妙にプライド高いし。


『いや、あの、だからね』

「すみません、すみません!!」


なんていい子なんだザンザス君!!
自分よりもはるかに年下に頭下げるなんて!!
相変わらずツナ君はオーラが黒いし!!


「大体お前さー」

「すみません、すみません!!」


とりあえずザンザス君がすごく可哀相なんで撮影再開して下さいィィィィ!!
これ以上ザンザス君に頭下げさせないでェェェェェ!!




もし、ドラマだったら

(撮影再開するらしいぞぉ)
(え、ホント!?)
(もみ上げがキマったからって)
(それが理由!?)
(あの監督だからなぁ)
(ちょっ、リボーン監督ゥゥゥ!!)



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