短い夢2
□楽屋まわり
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今日は朝から撮影です、そんでもって今は休憩中。この休憩中ってあたしが1番忙しい時間なんだよね……。
だって……、担当する子が増えちゃったんだもの!!
ドラマ『家庭教師リボーン』の撮影中は我が事務所『ボンゴレ』に所属する子をぜぇぇぇぇぇぇんぶっ、世話をすることになってしまいました。
「大丈夫、オレのマネージャーさんは優秀だから!!」
なんて……、あの悪魔さまの鶴の一声であたしの気苦労が増えました。
問題児っていうのはあの悪魔さま以外あまりいないと思うけど、それでも他の子まで撮影の間だけでも見なきゃいけないってのは結構なもんで……
とりあえず、あたしに対する嫌がらせだよね、完全に。
理由なんてわかってるんだけどね……
「あ、おはようございます」
『あ、ザンザス君。おはよう』
原因来ました。
「あれ?疲れてます?」
『まぁ、ちょっと……』
君が原因で嫌がらせを受けてるわけだよ、ザンザス君。まぁ、君は何も悪くないんだけどね。
あの悪魔、もといツナ君はあたしがザンザス君ばっか庇うから気に食わないらしい。ツナ君が歪んでるからザンザス君を庇いたくもなるんだってのをわかってるのかな、あの子は……
「あら!?女の子がそんな暗い顔するもんじゃないわぁ〜」
『あ、ルッスーリアさん』
「おはようございます」
「んもう!!ダメじゃないの!!あなた化粧もちゃんとしてないじゃないの、ちょっとこっちいらっしゃい!!わたしがメイクしてあげる!!」
『いやいや、そんなことさせられませんよ。それに他の子達の様子見に行かないと……』
あら、そう?なんて残念そうなルッスーリアさん。
最初は随分びっくりしたけどこの方、ホンマもんのオカマさんです。すごいナチュラルなオカマさんの演技するなぁ、なんて思ってたら本当にオカマだった。普段からオネエ口調でびっくりするくらい化粧が上手なんです。そして何故かルッスーリアさんが出演者の化粧まで担当してます。リボーン監督が節約だぞ、とか言って……。
この現場で役作りしてないのはこの人くらいだと思うよ、ホント……
「あららのら?何してるんだもんね」
『あ、ランボ君』
そういえばこの子もほとんど役作りしてないよね。
「こらっ、ランボ!!」
「あ、獄寺」
あらぁ……、素晴らしい役作りをしている獄寺君がいらっしゃったよ。
「廊下を走っちゃいけないっていつも言ってるだろ?」
「だってランボさんたこ焼き食べたいんだもんね!!」
「だからってそんなに急いだら転んじゃうだろ?危ないからダメ」
「う……、わかったんだもんね」
「いい子だな、ランボは」
…………、君は本当に役者だよ、獄寺君。
ドラマ中の獄寺君からは想像できないくらいランボ君と仲良しだなんて、未だに信じられない。
アホ牛っ!!とものすごい剣幕でキレてる不良の君はどこですか?あの役作りはどうやってんですか?
「あ、マネージャーさんおはようございます」
『お、おはよう……』
「あれ?疲れてます?」
今の君を見て何故か一気に疲れたよ……
だってさ、
「ちゃんとご飯食べてますか?オレ心配しちゃいますよ」
は、はは……
出たよ、天然系女ったらし。
「具合悪くなったりしたら言ってくださいね?オレが看病しますから」
『あ、ありがとう……』
そして自覚なし。
これって計算なんだろうか、なんて疑いたくなる時もあるけどね。
この獄寺君が目付きの悪い不良役をやってるなんて……、役者さんって色んな意味でおそろしい。
「獄寺ぁ〜たこ焼き!!」
「わかったわかった」
『たこ焼き?』
「スパナの差し入れです。これから楽屋行くんですけど一緒に行きませんか?」
『あ、行く行く』
スパナ君って最近うちの事務所に移籍してきた子だ。
少ししか話したことないからちょうどいいよね、様子も見に行くつもりだったし。
お腹も少しすいてるし、ザンザス君達と一緒に楽屋に行ってみたら中からいい匂い。
「あ、なんやマネージャーさんもおるやん!!」
なんだろう、この軽いショックを受ける感じ。
金髪、碧眼、見まごうことなき外国人なのに……、大阪弁っ!!
外人さんがテレビとかで大阪弁覚えてしゃべっちゃいました的な感じじゃなくて、とんでもなく流暢な大阪弁ですこと。
スパナ君が大阪出身の大阪育ちだなんて……、イ、イメージが。
「ウチが焼いたたこ焼きめっちゃうまいで、ちょお食うてみ?」
『スパナ君が作ったの!?』
「当たり前やん」
いやいや、楽屋で何やってんの君。確かにおいしいけど。
「ス、スパナ〜……」
『あ、入江君。どうしたの?』
スパナ君の楽屋に顔色の悪い入江君が入って来た。
入江君もスパナ君と同じ事務所から移籍してきた子だ。何かあったならあたしが何とかしないと。
「あ、マネージャーさん……、それが」
『ちょっ、どうしたの!?顔真っ青だよ!?』
尋常じゃないくらい顔色悪いじゃない!!
まさか具合が悪いんじゃ……っ!?
「僕のフィギュアがなくなったんです……っ!!」
………、はい?
フィ、フィギュア……?
「僕の愛する美少女アニメのフィギュアがなくなったんです……、前日から並んでやっと手に入れたレア物なのに、が、楽屋に置いておいたら……」
『……………』
「あ、あれがないと僕は…、僕は……」
『……………』
「あぁ、どこにいっちゃったんだよぉ〜」
び、美少女系アニメおたく……?
なんか若干納得できちゃう気がしなくもないけど。
まぁ、別にオタクと呼ばれる人に偏見はないからいいんだけど、少し……、いや、かなりびっくりしたかも。
「なんで楽屋でたこ焼きしてるわけ?」
うわ……、来たよこの展開。
もう流石に3回目だからそろそろ来る頃だと思ってたよ。
っていうか、もう飽きたって。はいはい、悪魔さまが来ましたよーっと。
『えっとぉ……、スパナ君の差し入れなんだけど、どう?』
「………、食べる」
『え、ホント!?食べる!?スパナ君、ツナ君にたこ焼きちょーだい!!』
「よっしゃ、まだまだぎょーさんあるでぇ!!」
この際スパナ君の大阪弁へのショックは置いといて、ツナ君が素直にたこ焼き食べるって言うなんて!!ものすごい奇跡じゃない!!
はぁ?オレの口にそんなもん合うとでも思ってんの?
くらい言うかと思ったのに、おいしそうにたこ焼きを頬張る姿が天使に見える……っ!!
よかった、今日は誰も悪魔の餌食にならずに済みそう!!ザンザス君も安心だよ!!
『ツナ君、今日はなんかご機嫌だね?』
「ん?前から欲しかった物買えたからね」
『そうなの?よかったじゃない』
「結構高かったんだけどレア物とかいうフィギュア売ったら思ったより高値で売れたから」
『フィ、フィギュア……?』
ま、まさか……、それって、
「入江のおかげでやっと買えたんだよ」
やっぱりやりやがった、この悪魔ァァァァァ!!
もはや悪魔じゃなくて魔王だよ、魔王っ!!
あぁっ!!入江君がショックのあまり気絶しちゃったじゃないの!!どうしてくれんの、入江君はこの後未来編の打ち合わせとか控えてるのに!!
「でも、あの羽はどうやっても安い値しかつかなかったんだよなぁ」
『は、羽……?』
まさかって思わず言ってしまうような状況が1日に度々ある日は数え切れないほどあるけど、もしかしなくても"まさか"って状況なんじゃ……っ!!
「あの見るからに邪魔そうで鬱陶しい羽、千円にもなんなくてさ」
『小道具売っちゃダメェェェ!!』
もし、ドラマだったら
―楽屋まわり―
(ザンザスの羽違くねぇかぁ?)
(スペアがなくて……)
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