短い夢

□甘さと君
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「煙草やめろ」

『は?』


いきなり何?
今まで何も言わなかったじゃん。煙草の匂いでも気になるわけ?あたしらメカニックなんて年中無休で油やら塗料の匂いしてんだから今更ヤニ臭さなんて気になんないと思ってたのに。
あぁ、でも、スパナの場合それプラス飴の匂いか…、特にいちご。


『ムリ。17の時から吸ってるし』

「未成年」

『マフィアがそんなの気にすんなよ』

「少しは気にしろ」

『煙草臭い?』

「それは気にならない」

『じゃあ何?』


そんな問い掛けをしながらまた紫煙を吐き出す。その煙がスパナとあたしの間をゆらゆらと昇っていった。
煙草をやめて欲しいって人って、煙草の煙が嫌いって言うのがほとんどだけど。それじゃないなら何だって言うんだろ?




「したら苦そう」


『はい?』




ぽろっ、口から落ちた煙草の代わりに勢いよく飴が突っ込まれた。


『な、なにすんだよっ!?ゔっ、ってなったじゃん、ゔっ、って!!』


むせ返りながら顔を上げた瞬間、目の前に青い瞳。
一度薄れたいちごの甘い味と香りが、また、口の中に広がった。




欲しいのは甘さと君

(やっぱり苦い……)
(ちょっ、なにす……っ!!)
(暫くなめてて)



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