チェシャ猫と歌う恋のトロイメライ【1】
□act4 甘い砂糖菓子のような悪夢
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マシロと言う女性は、聞き及んでいる限り今回で三度目の来日をはたしている。
よほどこの国に縁がある者だろうか、よく導かれる。
小さくておどおどして大きい……可愛らしい女性だ。
「おまえはどこを見ていたんだ」
「……いえ」
けっしてやましい眼で見ていたわけではないが、うっかりと心を読ませることを許してしまったようだ。
ナイトメア様が呆れた表情で俺を見上げていたので俺は平常心を装う。
思考を遮断されたナイトメア様はやれやれと肩をすくめて、それから重いため息をついた。
「今度こそは……心を壊したあの子が幸せになれればいいんだがな」
「……そうですね」
望んで導かれたのならば、あるいは――
過去を砕いて記憶のかけらをばら撒いてでも自分を守ったマシロが、不幸でありつづけたいわけがない。
今度こそ、今度こそはと呟くナイトメア様の言葉に俺は耳を傾けて頷くだけであった。
🍀