チェシャ猫と愛に生きるトロイメライ【2】
□act19 ハンニン
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実を言うと私は一人称小説が苦手だ。
どこかの吸血鬼もどきの人間や、
人間なのに魔族の血が流れているせいで異世界で魔王になった人や、
美少女と設立した部活で宇宙人や未来人、超能力者達と世界の危機に立ち向かう(心を読めそうだけどそんなことは決してない)男子高校生くらい独り言にセンスがなければ語り手の資格はないと思っている。
資格がないのはしかたないので迂闊に手を出さず、無難に三人称小説にしてくれた方がまだ読めるというものだ。
だから私は、私やボリスが読者を笑わせようと下手なギャグやノリツッコミなんかしたらそれ以上文章を追わずに物語を閉じるだろうし、それ以降その物語のことを気にかけることもないだろう。
そんな私がなぜchapter2に突入してからちょくちょく物語っているのかというと、これまたジャンヌ・ダルクよろしく電波をキャッチして今に至る、みたいな感じです。
表現の自由にもチャレンジが必要と言うことなのです。
「それで。なーんでまた一緒におふとんの中で寝ていたわけ?」
そんなこんなで私はおかゆを味わいながらシェフに問うた。
君は真冬の夜に飼い主を湯たんぽ代わりにする猫か。
「だって俺は猫だぜ?」
猫でした。
「あのね、伝染つらないように二階使わせたの解かってる?」
「だってー」
「だってじゃない。伝染ったら大変な思いをするのはボリスなのに。もう」
「あー! マシロはなんだかんだ言って俺から離れようとする〜っ!」
「そんなつもりで言ってるんじゃありません!」
「はぁ〜、俺はあんたに放っておかれてさみしくしていたのにひでぇー」
「そ、そんなこと言って昨日もっ!」
あんな苛立たしげな物音で気を引こうとしなくたっていいのに!
じぃっとした視線を送ればボリスがにかっと笑う。
「でも元気出ただろ?」
「それはあなたのおかげじゃ……」
「えっ、まだ具合悪いのかよ!? 調子は!?」
「え、えっと……ちょっとまだ喉が痛いなぁってくらいで。熱と鼻は治まったよ」
風邪は自分で治すものだし、薬を飲んで安静にしたおかげで気分は良い方だ。
数日も放っておけば勝手に元の調子に戻るだろう。