チェシャ猫と愛に生きるトロイメライ【2】

□act10 ヒトリノ
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極彩のライトを放つミラーボールが狭い個室を彩る。


「♪だからロンリー・ロンリー 切なくて〜♪ 壊れそうな夜にさえ〜♪」


俺は今、その場のテンションで飛び込んだカラオケで覚えたての歌を歌っていた。


「♪ロンリー・ロンリー 君だけはオリジナルラブを貫いてー♪」


一度聞いてからというもの気に入って、特にやることもない異世界暮らしで繰り返しリピートしまくった曲だ。
マシロが眠りについた後の、ひとりの夜には打ってつけの一曲。


「♪love me love me ツヨクヨワイ心♪ kiss me kiss me アセルヒトリノ夜♪」


歌い終わると同時に、それまでマラカスをシャカシャカ振っていたマシロから万雷の拍手を送られる。


「あはー。かっくいーね」

「サンキュー」


席に戻った俺はマシロからグラスを受け取る。
少し喉が渇いたからありがたかった。喉が潤う。


「ふふふ、ちょっと惚れ直しちゃったよ」

「そこはもっと好きになったって言ってくれないと」

「じゃあ好きになっちゃいました」

「拗ねるよ?」

「嘘。惚れ惚れしちゃった」


照れくさそうに目線を少し落としてはにかむマシロ。
あぁもう。なんでこの子こんな可愛い反応すんの?


じっと見つめていたらどちらの口数もめっきり減っていた。
間がもたず、俺は咄嗟にカラオケ機器をマシロに押し付けるように渡す。


「ほら、マシロも歌って」

「えぇぇ、ちょっと恥ずかしいかなぁ」

「ノリ悪いぜ。付き合ってよ」

「しょうがないなぁ」


一度は恥ずかしがってみるものの、二言目であっさり承諾するマシロの表情はふにゃんと緩い。
超べたべたの甘々な子になっちゃって。というのは今に始まったことじゃないんだけど、今日この頃はその傾向がますます加速しているような気がする。


(それは気持ちに気づけたから?)


そう思ったら嬉しくて嬉しくてにこにこしちゃう。
隣のマシロはそんな俺に気づいた様子もなく、カラオケ機器と睨めっこしていた。
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