チェシャ猫と愛に生きるトロイメライ【2】

□act7 ボウケン
2ページ/8ページ

試着コーナーから出るにあたって、
尻尾をどう収めるかとか、目の色をどうするかの問題に直面したけれど、やっぱり半猫人間のボリスとお出かけするのは並大抵じゃなかった。

おめめは私のサングラスを貸してあげて、尻尾は……お察しください。
とにかく、「さぁ、やっとこれで心置きなく店内を回れるぞ」と意気込んでいた私だったけど、その私の気持ちを打ち砕くように別の問題が生じたのです。


「わぁ、あの人カッコイイ」

「外人?」

「ツイッターにあげとく?」


白いタートルネックに生地の薄いジャケットとパンツを身に着けてもスタイルの良さは誤魔化せないし、
真っピンクの髪を全部押し込んだキャップと、右目と晒された左目には私のサングラスを掛けているけど、人目を惹く容姿には変わりない。
どこぞの芸能人かってくらい注目を浴びてるし、いや、むしろそんじょそこらのアイドルに負けてないんじゃないかって思うほどだ。

女の子は黄色い声をあげ、男性陣は自分の身体を見て肩を落としていた。
そんな群衆の視線を知ってか知らずかボリス本人は都会にやってきた田舎者ばりにきょろきょろしている。

その行動はさておき、私は初めてボリスをかっこいいと思った。
いえ、ボリスがかっこいいのは知っていたけれど、美人は三日で飽きると言うように目が慣れてしまっていた。
ここにきて、女の子達にきゃあきゃあ注目されるボリスはやっぱりかっこいいんだと改めて実感したのだ。



これじゃあアンバランスだ。
こんな自分が恋人だなんて不釣り合いすぎる。


彼のかっこよさを認識するのと同じに私はそう思い知らされた。
居た堪れなくて、歩くスピードが落ちてゆく。











次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ