チェシャ猫と愛に生きるトロイメライ【2】
□act5 コウソク
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「ね〜えぇ〜マシロ〜暇ー」
いわゆる逆トリップ後の世界で24時間も経たずに退屈を訴え始めた俺は、
マシロが歩きづらそうにしているのも構わず、むしろ進路を妨害するようにその腰にまとわりついて引きづられていた。
「かまってよ〜」
黙々と食器を洗っているマシロの右へ左へと交互に顔を覗かせたり、ぎゅうってしたり、構ってアピールに全力だ。
「することないんだから俺と遊ぼうよー。おはようからおやすみまでラブラブしよう?」
泡だったスポンジとお皿を持つマシロがぴたりと止まる。
「キスしたり、ぎゅうってしたり、やることはいっぱいあるんだぜ?」
「ね・え・よ・!」
「なくはないよー。ねえねえ、マシロってばー、ヒマだよ〜」
「ボリス、ハウス!」
「犬じゃないって! ねえ、マシロー」
「……はぁ」
マシロは疲れたような溜息と吐くと、蛇口をきゅっと閉めて身体をくるりと反転させた。
彼女は真っ向から俺を見上げる。
「そうね。もうやることもなくなったことだし、構ってあげる」
「マシロは優しいね。
で、何して遊ぶ?」
「そうね……昨日の続きでもしましょうか」
「え、昨日? なんかしたっけ」
「昨日はあなたに先手を打たれたわけだし、仕返ししたいって話」
「!」
彼女の発言にギョッとした。
それはつまり、そういうことと解釈してもいいのかな?
マシロは口角を少しだけ吊り上げて、挑発的に目を細めてほくそ笑んでいる。
「マシロ? ええと、あ、あの……」
「こっちきて」
「あ、うん!」
しかし、驚きはしたけれど、嬉しくないわけじゃない。
ない心臓がドキドキするような錯覚さえ覚える。
手を引かれ、そうして誘導された場所は先程朝食を共にしたダイニングテーブルの椅子だった。