妖精の譜歌〜The ABYSS×elfen lied〜
□Episode,10【魔弾のリグレット】
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まるで厄介者のように主を扱ったことに大して怒りが収まらないアニス。
なんとも言いがたいナタリアの表情。
己が主の発言に呆れるガイ。
心無い一言に瞳に厳しい光が宿るティア。
ジェイドは……今回に限って無表情なのが逆に怖い。
ルークとの付き合いにほとほと呆れ果てた一同の顔がそこに在った。
当のルークはと言うと、そんな彼らの態度がやはり気に喰わないのだろう。
あからさまに不機嫌に顔をゆがめるのであった。
このシビアでお暗く冷めた人間関係を目の当たりにしたカマラの表情も曇りがちで、けれどティアやルークのような感情は
微塵も胸に秘めてはいなかった。
「人間の世界もいろいろ面倒だね……」
険しい峠道を歩く同行者達の顔を眺めながらため息をついた。
そんな妹の痴れ事を兄はイヂワルに鼻で笑う。
ムッとしたカマラが兄にかぶりつく様は、重い沈黙
はてさて。
この沈黙が疲労からくるのかは確証はできない。
しかし、こうも険しい峠を長時間も歩き続けているのだ。
――体力のない者はそろそろへばる頃合だ。
アニスは悲鳴に似た声に一同が足を止める。
「イオン様!? 大丈夫ですか!?」
振り向けば、膝と掌を地に着いたイオンの脆弱な姿がそこにあった。
呼吸も大分荒れていて瞳の焦点が定まっていなかった。
あたりは緊張感に包まれる。
根暗に成り下がった大人達に動じなかったカマラの表情も強張る……
兄から離れるとイオンの傍らにちゃっかり寄ってくるのだ
「しっかり、イオン! 病気きちゃった!?
休めば治るよね!? じゃあ休もう!! 休まなきゃチョンパだから!!」
「そうですよ、イオン様!! すぐに休憩しましょう!!」
「すみません、アニス、カマラ……」
感謝しますと弱弱しいながらも満ち足りた笑みをつくるイオン。
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