妖精の譜歌〜The ABYSS×elfen lied〜
□Episode,7【ようこそバチカルへ・中編】
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ディナーも終わり、ナタリアと話し込んでいたカマラはこれから風呂を楽しむところだ。
扉一枚の向こう側は湯気で曇って中が窺えないが、湯気の下にあるのが“お風呂”と言うものだろう。
カマラは湯船で入浴の経験がない。
そのことをナタリアに伝えたら、びっくりしていた。
ナタリアが教えてくれた事だが、お風呂と言うものは身体を綺麗にする場所のことらしいが……。
(お風呂ってお湯で身体を綺麗にするんだよねー。知らなかったよ。さすが王女様のおうちだよね)
王女様の城でなくてもお風呂は普通お湯だが、生憎カマラはホースで水をかけられたり、川で身体を清めたりする知識しかなく、常識がなかった。
そのことをナタリアに伝えたら彼女は怒ってどこかに行ってしまった。
「……私、王女様に悪い事しちゃったかな?」
だとしたらすまないことをしてしまった。謝らなくてはならない。
憂鬱な表情で衣服を一枚一枚剥がす。時代錯誤な礼服を鼻の前に持ってくると鉄錆びた香りがつんと鼻腔を侵す。
この服を着てからもう長い時が経った。
これの持ち主も含めていろんな血をひっかぶった正装はもう着れないだろう……。
さてどうするか?
また誰か殺して奪うか。
だがそれをすることをジェイドは許さないだろう。
「……変なの。あんなおっさんの言うとおりにする必要なんてないのに……」
15歳とは思えない身体には肉がなく骨張ったウエストが露わになる。
成長段階、なんてものが少女に存在しないのか、有ってもいいはずの胸のふくらみがまるでない。
小振りなアニスやアリエッタと対比してもそれは明らかに小さい――と言うか、無いに等しかった。
カマラはタオルを頭部に巻くと、指先を胸に移す。
「これ売って新しい服を買おうかな……」
胸のペンダントを指先で弄(いら)うと証明にあたりきらりと輝く。
以前、エンゲーブ〜グランコクマ経由を行き来していた馬車の親父からいただいたペンダントだ。
汚らしい馬車の癖に高級な代物を持っていたので食糧を奪う時にもろとも物にしてしまったのだ。
売るなら質屋だったな。
しばらく殺す予定はなさそうだし、長持ちするだろう。
「でも……最後にひとりくらい殺しておかなくっちゃ……」
明日には、自分の身柄はマルクトに保護されてしまう。
その前に母の仇である奴のそっ首を跳ねたいではないか。
扉を開けると湯気の世界が現れる。
これがお風呂――しかし、生憎カマラの頭は獲物のことでいっぱいだ。
風呂できゃあきゃあ騒ぐのは湯船に浸かった頃だろう。
それまで、陰のある瞳は狂気を含んで、殺傷的な光に妖しく揺らぐのだ……。
浴槽側の扉が開かれたのはその時だ!
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