妖精の譜歌〜The ABYSS×elfen lied〜
□Episode,6【ようこそバチカルへ・前編】
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「ではルーク様は私どもとご自宅へ……」
「待ってくれ!」
ゴールドバーグの言葉を強引に遮ったのは、それまでカマラ同様に街を眺めていたルークだ。
「俺はイオンから叔父上への取次を頼まれたんだ。俺が城に連れて行く」
「……ありがとう、ルーク。心強いです」
一体心中で何を企てているのやら。
ルークの言葉がイオンへの気遣いか否か、誰も気付くものはいない。
「承知いたしました」
ルーク自身、その企てが別段悪いことではないと言うのに、嫌な冷や汗を掻いているのはどうしてだろう?
故に、ゴールドバーグの許可が下りたとき、イタズラの悪事を潜り抜けた少年のようにほっと安堵の吐息をもらしたのだ。
――それさえ心の中で、だ。
「それでは、ルーク。案内をお願いしますね」
「……あっ……」
ルークは返す言葉を失う。
可哀そうなルーク。
彼は確かにバチカルで生きていたが、それは自分の屋敷の中だ。
屋敷から外の世界に出れたのはつい先日のこと。
家までの道のりを知らないどころか、バチカルに帰ってきて実感がないのが正直な感想だ。
そんなルークの葛藤を察したのは淡い金髪のさわやかな使用人、ガイ・セシルだった。
そっと小声で主人にアドバイスを送る。
「ああ、ルーク。町の中心部に行くなら、その天空客車に乗ればいいんだよ」
「そ、そうか……いや、俺は知っていたぞ!」
意地を張るルークはイオンを連れてさっさと天空客車へと向かった。
苦笑するガイの脇を、イオンを追うアニスとルークを追うティアが過ぎる。
ガイも天空客車に向かおうとすると、その肩をジェイドにつかまれてしまった。
「旦那?」
「ちょっとよろしいですか、ガイ?」
「?」
珍しく困ったような表情に胡散臭げに肩をすくませるジェイドと、
傍らにいるカマラとミュウと蒼きライガ。
「どうしたんだよ、旦那」
「あなたに頼むのは、本当に申し訳ないのですが、皆さんはさっさと行ってしまいましたし、もうあなたしか残っていないんですよ」
「は?」
何を言っているんだ?
いや、何を企んでいるんだろうか?
そんな眼をジェイドに向けながら、ガイはいぶかしんだ。
「カマラは表向き、私の親族と言う形で立場を偽っていますが、彼女の力は偽りきれない危険性を帯びています。
私は保護者として、そんな恐ろしいカマラを入城させるわけにはいかないのです……さて、これは困った」
いつそんな立場になったのだろうか?
いいや、今はそんなことはどうでもいいこと。
ガイは背中に嫌な汗を掻く……。
嫌な……とっても嫌な予感が過ぎるのだ……!
「かと言ってひとり野放しにすれば何を仕出かすか解ったものではないし……と言うことでガイ」
ジェイドの表情は豹変し、花咲く笑顔の如く輝いた。
「私たちがキムラスカ城を出てくる間だけでいいのです。カマラを見ていてくれませんか? いいですよね!」
有無は言わせない。首を横に降らさせるもんか。
半ば(?)強制的なジェイドの言葉にガイは凍りつく。
父が娘に何かを言っているようだが、ガイの耳には届かない。
きっと身体中には蕁麻疹と見間違うほどの鳥肌が立っているに違いない。
恐怖にも似た感情がガイの中で湧き上がる……
女の子と一緒にいなければならないなんて!
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