妖精の譜歌〜The ABYSS×elfen lied〜

□Episode,4【仮面の襲撃者と敗れた腕】
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ルークの機嫌はより悪くなってしまった。

それと言うのも、コーラル城で人の首を安易にねじ切り、胴をたやすく二つに分ける等の残虐な惨殺行為を行った件の少女――カマラが自身の顔を覗き込んで大きな桃色の瞳で見つめてくるからに他ならなかった。
正直、極力カマラとお近づきになりたくなかったルークは、この状況はとても耐え難いものに違いない。
それでも彼の性格上、気まずいこの雰囲気をなんとしても打破したいものでもあったのは確かなこと。


「……なんだよ」

「えへへ……君、変なカオ」

「な、なんだとっ!?」

「だってそうなんだもん。ぶっすりしていてなんだか陰気臭い」


陰気臭い?
陰気臭いだと!?
冗談ではない。陰気臭いなんて言いがかりだ。
なんだか陰湿な眼鏡大佐と同類に見られていた不名誉に、ルークは声を荒げた。
陰気と“陰湿”は似て非なるものであるが、ルークはそれに気付いた風もない。


「おい、お前! 俺を誰だと思って口利いてンだ!! 俺はファブレ公爵の息子、ルーク・フォン・ファブレだぞ!!」

「ファブレ公爵? それってエライの?」


その発言にぽかんと大口を開けてしまったルークに威厳も高貴の欠片も見受けられない。
無知な少女の痴れ事が、なんだかバカにされたような気分になり、
ルークはムキになって言い返した。


「偉いに決まってんだろ! 俺はこの先国王になるんだ」

「国王様って一番エライ人だよね……ルークの器に納まらないと思うなあ」

「おまっ、お前! それってどういう意味だよ! ガキ!!」

「――ふっ」


不毛な争いの中、噴出す笑いが漏れでたのは、ルークが知らずにカマラのペースに飲み込まれていたその時だ。


「あら、やだ。ごめんなさい……彼女は人を見る眼があるんだってつい……」

「つい、じゃねえだろーが!! なんだよ、お前! あー、ムカつく!!」


最前からカマラに眼を光らせてたティアは、あろうことかカマラの正直すぎる、そしてあながち間違っていない発言に
不覚に笑い、そしてそれを恥として頬を赤らめた。
いつでも襲撃者を討てるように神経を継ぎ済ませていたのに、こんな顔を見られては説得力もないと考えたのだろう。
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