妖精の譜歌〜The ABYSS×elfen lied〜

□Episode,3【真夜中のキャッツベルト】
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「そうだ! ママの仇は!? それにアリエッタも! アリエッタはどこにいるの!?」

(騒ぐな。今は夜だぞ。奴等が目覚めてしまうぞ)


と言っても、カマラは今まで盛大に泣き喚いたのだ。
眼鏡の鬼畜軍人あたり、顔を出してもなんら不思議ではなかったが、それすらないのも不可思議だ。
不可思議を超えて不可解――不気味ですらあった。


(案ずるな、カマラ。アリエッタの身は拘束されてはいるが、無事でいる。ヒゲの上司殿と共にダアトに帰るそうだ)

「そう……、よかった……!」


恐怖、苦痛、疑心、そして安堵――
目まぐるしい感情の変化に思わず、吐息を零す。
今日と言う日は体力と精神力を著しく浪費してしまった。

日付が変わる数分前、窓を通して月明かりが部屋を照らす。


「アリエッタには会えないのかな……?」

(会いたいのか?)

「そりゃ会いたいよ! アリエッタは私のお姉ちゃんだもん! 久しぶりに顔を見てみたいよ」

(そうか、そりゃあ奇遇だな。俺ももう一人の妹に会いたいと思っていたところなんだ……。
 ついておいで。アリエッタのいるところまで行こう)


鼻を床に擦り付けて部屋を後にする兄の後ろ姿を追うカマラ。


「あう……か、身体がまだいたい……」


歩くたびに体中に鈍い痛みが走るのは、どうやら夢のせいだけではなく、先の戦闘で負った傷が原因のようだ。




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