妖精の譜歌〜The ABYSS×elfen lied〜

□Episode,3【真夜中のキャッツベルト】
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Episode,3 【夜のキャッツベルト】


「いやああああああああああああああああ!!」


夜の闇を裂かんばかりに轟いた悲鳴と共にカマラは覚醒した。


「はあ、はあ……」


激しく上下する肩、乱れる呼吸、顔中からしたたりおちる滝のような汗。
追い込まれた思考回路でなんとか状況を理解しようと思考を巡らせる。
時間は掛かったものの、自身を脅かしていた恐怖が夢だったという結論を見出せた。


「うう……! いたい、いたい……」


それでも癒えないこの苦痛はなんだろうか?

それは夢であっても、過去にあった真実だからだ。

カマラの断末魔のような絶叫によって安眠を妨げられた蒼いライガは、痩せた自身を抱いて泣きじゃくる妹に寄り添う。


「お兄ちゃん……お兄ちゃぁぁん! 恐いよ……すごく痛いのぉ……」

(泣くな、カマラ。それでも偉大なる母、ライガクイーンの娘か。
安心しろ……お前を恐がらせる奴も、苦痛を与える奴もここにはいない。
いたとすればそいつは俺が残らず食い千切ってやる……だから泣くな)

「う、うん……。う、うう……うわあああん!!」

(やれやれ、困った妹だ)


兄の顔は、人間で例えるなら苦笑を浮かべていたに違いない。
わんわんと年甲斐もなく泣き続ける妹が泣き止むまで、その頬に伝う涙をなめ取って暇を潰すとしようか……。






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