妖精の譜歌〜The ABYSS×elfen lied〜

□Episode,2【見えない手の襲撃】
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「――それがよろしいでしょう」

イオンの懇願に答えたはジェイドでもルークでも、この場にいる他三人――ティア、ガイ、アニス――ではなかった。
彼らの背後、三人ばかり部下を連れ添った髭ヅラの若い男を誰よりも眼に留め、歓喜の声でその名を呼んだのはルークだ。

「ヴァン師匠!!」

ヴァン・グランツ――
その風貌は二十台半ばとは疑わしい威厳を持ち合わせ、故にアリエッタを始めとした六神将の長に鎮座する身。
また、暇を持て余したルークの剣の師匠であり、この場で殺気を放っているティア・グランツの実兄でもあった。

彼曰く、コーラル城に向かったアリエッタの捕獲に参上したとのこと。
ついで、戦闘疲れのルークたちの配慮も怠らず、外に馬車を待ち伏せている。

「さすがは師匠! こいつらより頼りになるぜ!」

王族の血筋であるゆえ、他人への心遣いに欠ける発言はやはり、
現にティアとアニスの眉はぴくりと反応を示した。
そんな愛弟子の発言に苦笑を湛え、ヴァンはアリエッタに近づく。

「アリエッタは私が運びましょう」

「待って。
彼女に触っちゃイヤだよ」

ヴァンを静止したのは少女の声――
怒気を含んだ声だ。

石造りの床に左右の掌の跡が刻まれると、遥か高いところからそいつはやってきた。

「な、なんだよ、お前!!」

そいつの登場に驚くルーク。
ジェイドを始め、戦いに慣れた者は瞬時に己のエモノに手をかける――
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