妖精の譜歌〜The ABYSS×elfen lied〜

□Episode,2【見えない手の襲撃】
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人里離れた絶壁にひっそり佇む古城はかつてファブレ公爵の別荘として役割を果たしていたが、
数年前、主が城を手放してからと言うもの、城は錆びれ、得体の知れないアンデッド系の魔物が住み着くようになったのは
このコーラル城の運命の末路だろう――

「……負けちゃったの……?」

コーラル城最上階――
操縦士を連れ去り、コーラル城に身を潜めていた六神将“妖獣のアリエッタ”をようやく追い詰めたルーク一行。
すでに意気消沈して膝を突くアリエッタのワインレッドの瞳には絶望と驚愕以外、何も移していなかった。
そんな哀れな少女に刃を向けたのはマルクト帝国の軍人――ジェイド・カーティス。
眼鏡に長髪と軍人らしからぬ出で立ちの彼は、
何もない、酸素だけの空間から槍を出現させると、切っ先を少女の白い喉許に突きつける。

お、おい。待てよ」

それを止めたのはくすんだ紅い長髪の少年――ルーク・フォン・ファブレ。
彼は八年前、記憶を失ってから半ば軟禁状態のように温室でぬくぬくと生きていた。
それ故に、生きるか死ぬかの戦いの中、相手側の命を奪うことに躊躇いがある。

一方、ジェイドはと言えば……
甘ちゃんな坊やの戯言に呆れを含んだ吐息を零す。

「生かしていては、また命を狙われます」

「そ、それはそうだけどよ……」

「僕からもお願いします! アリエッタはダアトの査問会にかけますから……」

容赦ない軍人の言葉に返す言葉が見つからないルークに便乗したのは導師イオン。
15に満たない少年とアリエッタは様々な因縁がある。
命までは取らせまいと懇願にも似た態度で訴えかける彼は、導師の白い法衣は似合わなかった。
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