妖精の譜歌〜The ABYSS×elfen lied〜

□Episode,1【狼少女の二面性】
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「じゃあね、みんな。ママによろしくって伝えておいてね」

朝日が昇る前。
チーグルの森出入り口でカマラと兄貴分のライガは、家族のライガたちに見送られていた。
ライガクイーンは卵を温めるため、見送りはできなかったが、それでも寂しいということはない。
家を出る前にあいさつをしたし、
愛情は満タンだ。

「行ってきます」

兄の背中を借りると、カマラは朝の冷たさの中を駆け抜けた。
別に行きたいところも目標もあるわけではない。
物心つく前から劣悪な環境で生きていたカマラはある日、ライガの巣に訪れていた。
当初、彼らはカマラを受け入れてはくれなかったが、
あの人間たちに比べれば、ずっと優しく暖かいものだ。

何不自由ない環境だ。
それでも、実の娘のように可愛がってくれたライガクイーンから離れたのはわけがある。
彼女よりずっと早く家族の輪に入っていた人間の少女が引き取られてから、自分も世界に出てみたいと思うようになった。

「エヘへ……次はどこで何しようかなあー……あ!」

物思いに耽っていたカマラは我に返ったように声を出す。

お腹の虫が鳴いたのだ。

「お兄ちゃん、今の聞いたでしょ? やだなあ、恥ずかしいなー。 
それにもうガマンできないよ」
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