妖精の譜歌〜The ABYSS×elfen lied〜
□Episode,1【狼少女の二面性】
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(みゅ、みゅ……?)
青いチーグルが眼をしばたかせた。
凶暴なライガの巣に、十代半ばと言える少女がそこにいたからだ。
森に住んでいる彼らは人間界のあれこれを知る余地はないが、時代遅れの貴婦人が身につける召し物に爪で裂かれたようなものはまるでない。
「どういうつもりか知らないけど、私、君たちのことは絶対に許さない!
君たちのせいでみんな、死んじゃったらどうするのよ!!」
(みゅ、みゅーーー)
優雅な羽根つき帽子で表情は見えないが、乱暴に青いチーグルの耳を引っ張り挙げる行為は、彼らを歓迎していないのは確か。
「こんなもんじゃ足りないよ! 全然お腹いっぱいにならないよ! もっといっぱい持ってきて!」
(で、でも……ミュウ、もう悪いことはできないですの!)
「呆れた! 私たちにしたことも悪いことなんだよ! 君たち、罪の意識が足りないよ!」
「みゅーーーギャッ!!」
ライガの群れの中心に叩きつけられたチーグルは奇怪な悲鳴を搾り出す。
久しい肉にありつけられたと涎を垂らすライガに囲まれたチーグルを無常に見下ろすと、
カマラは最後のチャンスを口にした。
「今日はこれで我慢するけど、許したわけじゃないから……明日、朝一にいっぱいご飯持ってきて。
じゃないと……君たち、食べちゃうから」
岩陰が鋭利な切断面を残して宙を舞った。
得体の知れない現象、少女の気迫に背中を押され、小さな種族の群れは逃げ帰る。
猛獣に囲まれた青いチーグルも無様に転倒しながら、仲間の後を追う。
「君たちは運がいいよ……
もし人間だったら、殺しちゃってたかもしれないもん……」
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