妖精の譜歌〜The ABYSS×elfen lied〜

□Episode,0【郷里】
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(今度はいつ出発するんだい?)

「んー。明日、かな?」

時はすでに夕時。
そろそろ腹が空いてきた頃だろう。
それでも時間を忘れて今まで語り合ったのだ。
家族水入らずの団欒だけで、胸いっぱいにふくれそうだが、残念ながら少女の幼い胸が膨らむことはまずない。

(ちょっと急じゃないかい?)

「えへへ、もともと帰ってくる予定じゃなかったからね。事態が事態だから帰って来ただけで、本当ならもう少しブラブラするつもりだったんだよ」

(……この親不孝者)

「ママ、だあいスキ! えへへ」

母のわき腹に寄り添って無邪気に笑う少女のまわりでまた数匹のライガが寄り添う。
少々――いや、かなり――暑苦しいのは、きっと家族といるから。

(今回はやらないのかい?)

「ん?」

(母を超えるのだろう……?)

彼女が人間だったら、イタズラっ子のような、そして挑戦的な笑みを浮かべていたであろう。

「えへへ……」

その笑顔に闘争心に火がついたのか、負けず嫌いな少女の顔つきが変わる。
少女は立ち上がると、人間離れした跳躍を見せた。
跳躍地点、着地地点の地面に左右の掌の型が刻まれているのはいかなるわけか
ここにいる少女と少女の家族は今更、気に留めることでもなかった


母と距離をとると少女は構えた。
格闘家のそれを真似ているつもりか、猿真似程度のつたない構えだ。

「ママ! いくよ!」

少女はそう宣言すると、母へ向かって走った――





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