チェシャ猫と歌う恋のトロイメライ【1】

□act8 可愛い女と呼ばないで
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「マシロ。私たちと外食しないか?」


ナイトメアは昔馴染みの知人であるマシロにそう声をかけた。
マシロはぽかんとした表情で恩師の言葉を繰り返す。


「外食?」

「そうだ。私とグレイとで食事しようと思ってだな」

「食事……」

「……やはり気が進まないか?」

「いえ……そんなんじゃないです。ただ、私……ご飯はあんまり好きじゃなくて……」


ナイトメアはおそらく、否きっと気付いているのだろう。マシロはそう思った。自分の味覚はすでに死滅していることを。
そして、そんなことを心に思ってしまった時点で彼に読み取られてしまったのだからどの道知られている。


「なぁに。話しがメインさ。気負う必要はないよ」


案の定ナイトメアは心境を悟ってくれたのでマシロは少し困った顔をしてしまう。
ご飯も楽しめず、口下手な自分を誘って何か利点があるのだろうか?
表情だけでなく、心情でも物言うマシロにナイトメアは「誘われてくれないか?」となおも食い下がらない。
必死に誘いを蹴る相手でもなかったのでマシロは二つ返事で頷いた。


「いいですよ。お邪魔でなかったらご一緒に……」

「君は謙虚だなぁ。日本人は皆そうなのか?」



「さぁ、どうでしょう」とはにかむマシロにナイトメアは安堵の息をつくが……


(浮気)

「ハッ……!?」


突然自分の内に流れ込んだ声に振り返ってしまう。
黄金色の視線と鉢合わせしてしまった。部下の爬虫類然とした瞳とではない。
ボリスが突き当りの壁から顔を覗かせてにんまりと笑いかけてくれた。










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