チェシャ猫と歌う恋のトロイメライ【1】

□act6 忘れた夢のつづき
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「マシロ……ネズミ食ったらあんたのこともぐちゃぐちゃに食べたいけど、構わないよね?」

「は、はあぁぁぁ!? かっ、構う! 構う構う! 公衆の面前でなに言って……!」


露骨すぎる物言いに慌てだすマシロにたいして、彼女の敵である双子がニヤニヤと笑みを湛えながら揶揄(やゆ)するのは当然のことだったろう。
嘲弄(ちょうろう)する彼らを筆頭に各々が喋りだす。


「お姉さ〜ん? わりとチョロいんだねぇ?」

「おお、尻が軽い軽い」

「バ! バカなこと言ってんじゃ……!」

「マシロ〜! 俺をかばって! 猫に食べられる!」

「あ、あなたのことまで庇いきれない!」

「なんでなんで!?」

「双子にとって喰われるから!」

「お姉さーん? 僕らは悪食じゃあないよ?」

「冗談は顔だけにしなよ、お姉さん♪」

「ひぃ……っ! ボ、ボボボリス〜! 助けて!」

「あー、もう。目もあてられない虐められっ子気質……そーいうのは俺だけにしろって言わなかったっけ?」

「……あーあ、ボリスも相当イカレてるね」

「目もあてられないとはまさにこのことだよ」

「マシロ〜! 猫のところに行かないで行かないで!」

「おまえさぁ……誰のものだと思って……」

「いあ、いあ、ボリス! ああ、双子が、双子が窓に窓に!」

「あんたもなにピアスみたいにラリッたこと言ってんの……意味分かんないけど」


てんやわんやで話しの収拾がつかなくなってきたところで本題に戻そう。
閑話休題である。


「どういうことだよ、ピアス……おまえ、ハートの国から弾かれてたじゃん」

「マシロがこっちに来るのは二回目だね!」

「いや、二回目だけど……聞けよ、おまえ」

「弾かれたおまえがなんで二回目って知ってんのさ!」

「こいつじゃあ話しになんないし、お姉さんが説明してよ」


ひとりだけ嬉々としているピアスに対してボリスとダムが問いだそうとするが会話がなにひとつ噛み合っておらず、それを見かねたディーがマシロにすべてを丸投げた。
状況説明を求められたマシロは依然困惑したままだった。


「ごめんね……? あなたのことは覚えてないの」

「え〜っ!? そんなそんな!」

「ごめんね」

「うぅ〜、マシロ〜っ……」


これ見よがしにしょんぼりとしてしまうピアスの顔から他人事のように浮かべた同情の視線を逸らす。
それからボリスを窺う。黄金色の視線と鉢合わせてしまった。
ボリスも困惑していたようで、ただマシロよりも多くの複雑な心境である様子だった。
それは疑惑だったり、嫉妬だったり、この後は面倒くさい愛の問い詰めが待っているんだろうなとマシロは息をついてしまう。


それでも身に覚えがないと再度、首を振って潔白を示すしかない。



話題のズレを直したところで問題はなにひとつとして解決しなかった。





とりあえず、ボリスはピアスの背を銀食器たずさえて追いかけ回す。
八つ当たりでしかない。










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(2016/02/23)閑話休題ってとっても便利は言葉だねって話し(違)
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