チェシャ猫と愛に生きるトロイメライ【2】
□act28 ヘイオン
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旅行から帰ってきて数日が経ったある日の午前10時頃。
今日ものろのろと起き出した俺は寝惚けまなこを擦りながらリビングに赴く。
そこでも未練たらしくソファーの上で丸くなった。
「もー、怠惰! 毎日何をそんなに夜更かしすることがあるの?」
気の赴くままにごろごろしていると最近やけに活動的になったマシロがスコップ片手にぷんぷんしている。
いや、スコップって言っても本格的な落とし穴を掘る方じゃなくて子供が砂場で使うやつ。
「今日はでかけるんだから私が戻ってくるまで準備しててよね」
マシロは俺のスイッチが入らないと見るやそう言い残して庭に出て行ってしまった。
気にはなったけどリビングの大きなガラス窓からマシロの姿が見えるので俺が特に動き出すことはしなかった。
長らく手を付けなかった庭は緑が鬱陶しく生い茂っている。
マシロがせこせこ草をむしってるのを眺めながら怠惰に手繰り寄せたTVのリモコンスイッチを押す。
『プールに遊園地に動物園ってすごいですねー!』
『サーカスまでありますよー!』
『もうどこを目指してるのか解かりませんねー!』
TVでは夏休み特集の番組コーナーが放送されていてこの間行ってきたレジャーパークが枠を取っていた。
草を抜いた反動で尻餅をつくマシロをぷっと笑う。
と、その時、宣伝番組が中断してニュースがぶち込まれてきた。
『本日未明、有栖川市郊外の水流で発見された身元不明の―――』
笑っているのがバレて怒った顔をするマシロに手を振る。
マシロはツンと横向くと、俺に背を向けてさっさと作業に戻ってしまった。
『又、数キロ離れた森林で◆◆さんと思われる遺体も発見されており……』
『遺体の損傷も激しく……』
『警察は身元不明の男性を◆◆さんと交際してた●●さんとして調査を……』
TVを切る。
俺はあくびをしてから身体をのび〜っとすると窓に向かった。
この暑さで顔を真っ赤にするマシロがそろそろ×ぬんじゃないか心配になってきた。
とりあえず、一休みさせてから出かけようかな。
そんなある日の午前10時半頃の話だった。
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