チェシャ猫と愛に生きるトロイメライ【2】
□act20 サイカイ
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29日に梅雨が明けて8月になるとますます日中の気温が上がってゆく。
ちょっと前までは閑静な別荘地だったのがこのところ更に人が集まり、夜毎川辺でバーベキューやら花火を楽しむ歓声をよく耳にするようになった。
それが俺にはつまらなく感じた。
他の連中は楽しくやってるのに、最初の頃は異世界ライフを満喫する筈だった俺は日がな一日を持て余しているからね……。
「ねぇ〜、ダーリン、ダーリンってば〜」
「はいはい、なんです、ダーリン」
「毎日家ン中ばっかで飽きるよー」
ちなみにダーリンは男女関係なく適用する。
スマホ弄るのもいいけどそろそろ活発なことがしたい。
「もう風邪なんてどっか行っちゃっただろ〜、なぁなぁ出かけようぜ〜」
「今お洗濯中なので無理でーす」
「じゃあそれが終わったらで良いからさぁ〜」
「だ〜め」
「……」
こんなにお願いしてんのにちょっとも検討してくれないマシロにムッとクる。
寝そべっている状態のまま尻尾がばたん、ばたんと左右の床を叩く。
「ねっ、マシロ、銃に触らせてよ」
「だーめ」
「少しでいいから」
「駄目ですー」
「ちょっとだけでも」
「駄目」
「え〜、つまんないなぁ」
「ボリスに持たせると危ないんですもの。ちょっとも駄目よ」
「あの感触が恋しいのに……じゃあせめて目の保養だけさ……」
「それでも駄目」
「銃のない猫人生なんて8割方損してるよ〜っ。チーズのないピアスみたいに味気ないネズミ人生だよ〜」
「特定の嗜好品がないと人生の何%損するってよく聞くけど、そんなの個人によって違うものじゃない。
それにタバコみたいに害になるものだってあるんだし、禁煙するみたいに銃は諦めて」
「そんな〜! マシロ〜っ」
俺が何を言っても融通が利かないマシロ。しまいには……
「ねえ、マシロ〜」
「もう……うるさいなぁ……ボリス、ハウス!」
「俺は犬じゃにゃいって!!」
犬扱いしてくる始末で俺は泣いた。