チェシャ猫と愛に生きるトロイメライ【2】

□act19 ハンニン
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(あれ? 話数が1話飛んでる?)


となると私は1話まるごと出番がなかったと言うことか。


淡い暖色の光をまぶたに感じながらメタなことを思う、そんな朝方のこと。


私が病状に伏せている間、ボリスが物語を進めていたのかしら?
よく考えなくても、イレギュラーな物語の主人公よりボリスが出てこないことの方が物語として破綻してしまうからそれは良いんだけど、問題はボリスが1話分をひとりで持ち堪えたと言うことにある。
3ページか10ページかは知らないけど、まぁ、そこらへんは私への思いとかの短いモノローグでなんとか繋げておいてくれたんでしょう。

おかげで私は回復した。
ボリスに感謝しなければ。


さて、その肝心な功労者は今どこにいるのかと言うと……。


「スー……スー……」

「……」


なぜ故か私を抱き枕にしておふとんの中にいるんです。
とても安らかな顔をしているのに結構がっちりホールドしてきて執念を感じます。何してるのこの人は。


「ちょっ……と! ボリス!」


病人と一緒に寝るなんてどうかしてる。
感染さないように二階の部屋を貸していたのにこれじゃあ意味がない!
ハッ、もしや私の風邪が治ったのはボリスに感染つしてしまったからなんじゃ……!?


「ボリス! 離して! ボリスったら、ねぇってば!」


私はボリスの腕から抜け出そうとする。
が、強烈に抱き締められていて難儀を強いられた。
それでも、なんとか重い腕を持ち上げてふとんから抜け出すと……


「ボ〜リ〜ス〜! 起きなさいっ!」

「う〜ん……うー……マシロー?」

「他に誰がいるって言うのよ!」


もごもごするボリスの傍で呼び続けていれば、ようやく彼は目を覚ました。
ぱっちり開いた蜂蜜色の瞳孔が私を捉える。
じっと見つめてくる視線に同じように見つめ返すと……


「ボリス?……あっ!?」


腕を取られ、私は再びふとんの中へ。

「むにゃむにゃ……マシロ〜」

「ちょっ、ちょっとボリス!? やだっ、ちょ……やっ、やぁっ」

「うにゃぁ……にゃむにゃむ……」


引きずり込まれた真っ暗な世界は彼のぬくもりと匂いでいっぱいで。


(かくして私の運命はいかに!?)


ふとんの中でわちゃわちゃ。
私だって抵抗するけど、それもすぐに止む。











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