チェシャ猫と愛に生きるトロイメライ【2】

□act13 ヨアケノ
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「んっ……んん……ん……?」


やわらかな光をまぶたの裏に感じて目を覚ます。
ボリスの安らかな寝顔がとても近くに感じられた。
それもそのはずで私は彼の抱き枕にされる形で抱き締められていたのだ。
彼の呼吸をすぐ傍で感じられる。
そんな幸せに小さな笑みが零れた。


起こさないように彼の腕から抜け出してスマホを取る。
ボリスは短く呻いただけで起きる気配はなかった。
ホッと息をついて部屋を後にする。


洗面所で顔を洗って気分もすっきり。
洋服に着替えてくるりと回転すればワンピースの裾がひらりと舞いあがる。


心機一転。
身なりを整えてリフレッシュした私は続けて髪も櫛で梳いてゆく。


(こんな爽やかな朝を迎えられるなんて……。なんて素敵なことだろう)


ふふんと鼻が鳴る。
気を抜くと今にも鼻歌を歌ってしまいそうだった。


「おはよう」


リビングに行くとなんとボリスも起床済みだった。
テーブルの傍に立っていた彼に私はちょっとばかり驚く。


「おはよう、ボリス。ごめんなさい、起こしちゃった?」

「ご主人様が恋しくて起きちゃった。もうちょっと寝ていたかったのに」


猫は夜行性なんだぜ。
生あくびを噛みしめつつぶつくさ言いながら目をこするボリス。
彼の手元には湯気をくゆらすマグカップが。
鼻腔をくすぶるこの香りは……


「コーヒー?」

「正解。あんたのために淹れておいたんだ。飲んでくれる?」

「もちろん」


親指を立ててグッドポーズをきめる。
それからボリスのもとに駆け寄った。
足取りは羽が生えたように軽い。
私はボリスの左腕に飛びつくように抱きついた。
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