チェシャ猫と愛に生きるトロイメライ【2】
□act11 タダイマ
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雨は家に着く頃には大降りになっていた。
最近は天気がぐずる日が多い。
一応、天気予報士の話では月末に梅雨が明けるらしい。
早くこんな日々とおさらばしたいものだ。
じめじめしているのは嫌だからね。
「ただいま」
その言葉に、一瞬どきりとした。
「なに? どうしたの? そんな驚いた顔をして」
ボリスは不思議そうな顔をして覗き込んでくる。
嗚呼、私、動揺が顔に出ちゃうんだなぁ。
「ううん、なんでもない。おかえりなさい」
長らく"おかえりなさい"を言う相手がいなかった。
"ただいま"なんて言葉も、気づけば言ってなかった気がする。
(そっか。今はもうひとりじゃないんだ)
それがなんだかくすぐったくて笑っちゃうけど、悪くないなって。
「ただいま、ボリス」
ボリスがただいまって言ってくれるのが嬉しくて。
おかえりなさいもただいまも言える場所がこの世界にもあるんだって。
そう思ったら涙が出た。
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