チェシャ猫と愛に生きるトロイメライ【2】
□act7 ボウケン
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「買うなら俺がメイクしてあげるぜ。あんたって不器用って言うか、化粧なんかしたことないだろうし、化け物になられちゃ困るしね」
「ふふ……可愛く仕上げてね?」
「どうかな? まずその目をどうにかしないと」
「じゃあちょっとそこらにいるアリスさんみたいな感じの可愛い子のと交換して……」
「交換……えっ……?」
「あっ、でもそうなったら私はその子に成り変わってしまうわけだから……」
「マシロ、さん……? あんた何言って……」
「えっ、だから例えばアリスさんと目を入れ替えたら私はアリスさんとして長い余生を送らなきゃいけない、みたいな夢のようなお話が」
「そんな洋画でありそうなサスペンスホラーな成り変わりは誰も書かないからね!?」
「あら。そっちの方が薄気味悪くていいのに」
くすくす軽口を叩いてから見れば、後ろに下がりつつあるボリスが。
冗談で言ったんだけどなぁ。ボリスはブラックジョークが苦手なのかな。
冗談が解からない男は置いておいて、何かひとつくらい買っておこうかと思い、お試し用に使ったファンデーションの箱を手に取る。
……手にしようとしたところで値段が目に入り、指先がぴたりと止む。
「マシロ?」
固まる私を不思議に思ったボリスが声を掛けた。
「あ、あははっ……もうちょっとお手頃なやつがいいかなー」
さっと引っ込めた指で頬を掻いて誤魔化す。
ボリスは呆れた笑みをしつつも私のお財布事情に潤いが足りないのは既知なので煩いことは何も言わないでくれた。
ふたりで同じような色合いのもので、1の位が5未満且つゼロの数が3個のファンデーションを探すことにした。
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(2016/09/29)
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