妖精の譜歌〜The ABYSS×elfen lied〜
□Episode,9【紅と鮮血】
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油臭い廃工場から脱出して鼻腔をくすぶったのは湿気と、雨のにおいだ。
雨のヴェールに視線遮られているが見える。
軍艦をバックにして、兵士に囲まれたイオンとカマラ、烈風の少年と鮮血の長髪の後姿がそこにあった。
鮮血の姿を捉えたとき、何故だか知らないけど、ルークは抜刀し、走った。
「イオンを返せーーーーっ!!」
鮮血の少年は振り向き間際、剣を抜き、ルークの件を受け止める――
――それがルークと“鮮血のアッシュ”のご対面だ。
「お前かっ!」
「な……っ」
ルークの顔を捉えたアッシュが憎々しげに呟く。
アッシュの顔を捉えたルークの顔が青ざめる。
走り寄ってくる仲間達の顔が驚愕の色が走る。
そこにあったのは、同じ顔――
似ている、なんてレベルじゃない。
鏡に映したように、“同じ”人間の姿がそこに在った。
ルークの剣が音を立てて、弾かれる。
「アッシュ! 今はイオンが優先だ!」
「分かってる!」
シンクの叱咤にアッシュは怒鳴って返した。
去り際、再度ルークに睨みつける。
碧の瞳に揺らめくのは憎悪と怨恨の焔。
「いい身分だな! ちゃらちゃら女を引き連れやがって!!」
さながら六神将の制服を纏った“ルーク”は皮肉いっぱい吐き捨てると軍艦に乗り込んだ。
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