妖精の譜歌〜The ABYSS×elfen lied〜

□Episode,7【ようこそバチカルへ・中編】
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屋敷の前でルークは去り行く仲間たちを見送った。


「……私はモース様にご報告があるから」


名残を惜しむことなく、簡潔に別れを告げるティア。
イオンはつつましく一礼すると、アニスを呼びかける。


「では、僕たちも御暇しましょうか、アニス」

「はい……。あのあのぉルークさまぁ……アニスのこと、忘れないで下さいね?」

「なんだよ、もう会えねえみてーじゃん」


おおげさだと笑うファブレ公爵の坊やは、本当の悲しさや怒りを味わった事などないのだろう。


「それはあながち、間違っていませんけどね」


眼鏡の位置を直すと、ジェイドは薄い唇に笑みをつくった。
城を見上げるカマラを一瞥すると、ジェイドたちは入場した。


Episode,7【嗚呼、ようこそバチカルへ・中編】



元々、導師イオンはキムラスカとマルクトの和平のため、ジェイドと共にバチカルを目指していた。
その道中でルークとティアと出会い、インゴベルト国王陛下に会わせる事を条件にルークたちの同行を許していた。


しかし、それも今日で終わり――

明日になれば皆、それぞれの国許に帰るのだ。
イオンとアニス、ティアはダアトに。
ルークは無事に帰れた、彼の冒険ももう終わりだ。
ジェイドはカマラを連れてマルクトに帰還するだけ。
カマラ本人は知らないだろうが、ジェイドは彼女を会議にかける気だ。
それがピオニー陛下の懐刀、“死霊使い(ネクロマンサー)ジェイド”の責務。
そうなれば、カマラは処刑か流刑にかけられるだろう。
マルクトでは、時折不振な惨殺事件で騒がれていた。
犯人はいまだに不明だが、手口はカマラのものと酷似している。
証拠はないが、もしそれが確信だったならカマラは処刑か流刑に処され、最悪、研究のモルモットにされて一生を強いられる運命を辿ることになる……。
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