妖精の譜歌〜The ABYSS×elfen lied〜

□Episode,4【仮面の襲撃者と敗れた腕】
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キムラスカ・ランバルディア王国とマルクト帝国の国境の上に栄える砂漠の町ケセドニア。
両国に支配されず、実質中立の立場にある砂漠の都市は、
露天とそれに寄ってくる客で賑わっていた。


「では私はここで失礼する。アリエッタをダアトの監察官に引き渡さねばならぬからな」

「えー! 師匠も一緒に行こうぜ!」


駄々をこねる赤毛の弟子のヴァンは苦笑を威厳のある顔に浮かべる。

なるほど。よく見ればまだ若い。
ヒゲさえ剃ってしまえば二十代としても通るだろう。


「あとから私もバチカルに行く。わがままを言うものではないよ、ルーク」

「だってよ……」


大好きな師匠にそう言われてしまえば、いくら王室育ちで花よ蝶よと育っていったルークも反論することはできない。

迷子のように今にも泣き出してしまいそうなアリエッタの腕を引いて、ルークたちに一時の別れを告げて去ってゆこうとするヴァン。


「アリエッタ!」


カマラがアリエッタを呼び止めたのはその時だ。


「カマラ……また、です」

「うん! また今度ね」

(……まあ、そんなに気を落とすなよ)

「解ってます……です。
お兄ちゃんも、元気で……です」


妹のように笑うことに慣れてないアリエッタは、それでも口元に小さな笑みを浮かべた。
母の仇――最愛の導師を略奪されてしまった導師守護役(フォンマスター・ガーディアンがいる手前、けっして心穏やかではないが、カマラの精力ある元気な声と笑顔に、少なからず励まされたのは確かであった。


「……いってきます」

「いってらっしゃい」


しばしの時を、姉妹は別離の道を選ばずを得なかった……。




Episode.4【仮面の襲撃者と敗れた腕】
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