妖精の譜歌〜The ABYSS×elfen lied〜

□Episode,2【見えない手の襲撃】
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「そんな……」

悲しげにざわめく木々の中、
糸が切れてしまった操り人形のようにカマラの膝は地面についた。
何処かへ行ってしまった兄の悲しい遠吠えが鼓膜を叩くが、それが遠いのか近いのかさえ、絶望に馳せるカマラの解らない……。

「そんな! ママが死んじゃったなんて! そんなのあるわけないよッ!!」

小さな拳を死力の限り、地面を叩きつける。

「痛……う、ううううぅぅぅぅ」

涙が出るのは痛みか。
硬い地面に負けた拳はぱっくり割れ、血をしたたかに流す。

痛いから泣いてるわけじゃない。
頬を伝う水は苦痛のせいじゃない。

「ママ……ママアアアア!! 
うわああああああああああアアアアアアを!!」

喉がはちきれんばかりの咆哮は自然を揺るがさんばかりに響きわたる。
驚いた森の住人たちは逃げるように騒ぐ。

――が、


ズギャンッ……

ボタ……


「許さない……!
絶対に……許さない!!」

涙に鼻水に汚れた顔の中、幼い唇を噛み締め、ひび割れた低い声で恨みの言葉を紡ぐ……。

「ぜったいに許さない!! 
殺してバラバラにして葬ってやる!!」

少女の怒りに答えたのは見えない「何か」……。

胴を真っ二つにされ、自身の血液に溺れるように停止した駒鳥のように、
見渡す限り緑に仕立て上げた木々が切断面を残して宙を舞う……





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