〈 仮定 〉
…―――時折、ふと考えることがある。
もしも、あの時…“キミ”に出逢っていなかったら、オレはどんな生を送っていたのだろうか‥と。
…古のあの日、あの時に、もし“キミ”と出逢っていなかったなら―――……
……その時は、恐らくキミがあんな最期を迎えることは、まず無かっただろう。
そう……、キミもオレも‥互いに交わることも無く、それぞれに別の道を生きていた筈だ。
当然、オレが“キミ”を失う痛みを知ることも無かったし、その為に魔界を棄てて人間界に身を忍ばせる様なことも無かった。
だが……。
そうなれば、間違いなく“今”のオレは存在してなどいなかっただろう。
恐らくは……、そうだな。未だに妖狐として魔界に身を置いていたに違いない。
………いや‥もしかすると覇権争いに敗れて、疾うにこの世から消え失せていたかも知れないな‥。
何れにしろ、その時はこうして母さんの“息子”となることも、幽助達と知り合うことも無かった訳だ。
……勿論、キミと‥“今”のキミと出逢うことだって………。
…今が正しいのかどうか、そんなことはわからない。
ただ‥少なくとも、オレは今、“ここ”にいる。
“ここ”で、生きている。
それは紛れもない事実だ。
………物事に、偶然なんて物は存在しない。
あるのは、思いも掛けない必然だけ…。
今、オレがここに存在し、オレの隣にキミがいる。
それが、“今”の全て。
必然という名の“奇跡”。
ならば、オレは―――……。
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