文章
□花喰い
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芳しいニオイを撒き散らして咲き誇る黄色い花を前にして
うまそうだなと抜かすタレ目に呆れた。
そっと黄色い花弁に触れる指先は女にでも触れるような繊細さで、菊の花はそれに合わせて可憐に揺れた。
…やめとけって
どうせこの男はお前を食うことしか頭に無え
俺がよっぽど変な顔をしてたのか
「食うだろ、普通に」と、凌統は言った。
「いや、食わねえだろ普通。その発想はどっから来るんだ」
そう言った押し問答を繰り返すうちに、だんだん喧嘩じみてくる。挙句これだからアンタは物を知らないんだ、試しに食いにくれば、と素っ気なく凌統は言った。
ややあってこれは酒の誘いかと思ったら口元は緩む。
食わせてやる代わりに酒はアンタが用意しなよとピシャリと言いつけられた。