頂き物

□忘れ人
1ページ/6ページ



「あーぁ、死んじゃった」


嬉しそうな声。
それが癪にさわった。

「まだ死んじゃいねーよ、クソガキ。残念だったなぁ」
そんなコトを言ってみるが、指一本動かすコトは出来ない。


クソッ!なんて様だ!


「ねぇ、痛いの?」
血だらけの俺の顔を覗き込むようにしてガキが聞いてきた。その目にあるのは、隠しきれない程の好奇心。
「痛ぇに決まってんだろうが」
「ふーん、そうだよねぇ。こんなに傷が深いもんねぇ」
あろうことかそのガキは、手に持った木の枝でわき腹の傷を突きやがった。
「うっ!…ぁ…っ……!」
苦しむ俺を見て嬉しそうに笑うガキが視界の端に映る。
子供が虫や小動物を虐めては楽しんでいる。そんな光景をよく見るだろう。俺は今、その虐められている虫の気分だ。
「っう…あ……っのクソガキ!!……どーいう教育受けてんだっ!お前ぇの親の顔が見てぇぜ!!」
「へー、そんなコト言っちゃってもいいんだぁ」
「あぁ?」
「ここの森、夜になると人喰い狼が出るんだ。それにさっきおじさんが殺した人達の仲間が来るんでしょ?ずっと見てたから知ってるよ」
勝ち誇ったように俺を見下ろす。

なんてガキだ…!!

「………」
「ねぇ、どうするの?そうだねぇ、ごめんなさいって言って謝れば助けてあげないこともないかな」
「………」
「さっきの人達の仲間と、狼。どっちが先におじさんを見つけるかなぁ」





「………………ごめんなさい」





悔しさと情けなさでいっぱいの俺の横
で、クソガキがニタニタと笑ってやがる。


ふとその顔が、誰かと被った気がした。

「おじさん、プライドないの?まぁいいや。よくできましたってね」
いい子いい子と頭を撫でられる。

なんという屈辱。

今まで生きてきた中で、これ程の屈辱感じたコトが今まであっただろうか。

いや、無くは無いかもしれない。


あの腹黒軍師や…あと誰だっけか。

思い出そうとするのに、目の前に霧がかかったように思い出せない。


誰だ。


大切な奴だったはずだ。




誰だ。








次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ