頂き物
□忘れ人
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「あーぁ、死んじゃった」
嬉しそうな声。
それが癪にさわった。
「まだ死んじゃいねーよ、クソガキ。残念だったなぁ」
そんなコトを言ってみるが、指一本動かすコトは出来ない。
クソッ!なんて様だ!
「ねぇ、痛いの?」
血だらけの俺の顔を覗き込むようにしてガキが聞いてきた。その目にあるのは、隠しきれない程の好奇心。
「痛ぇに決まってんだろうが」
「ふーん、そうだよねぇ。こんなに傷が深いもんねぇ」
あろうことかそのガキは、手に持った木の枝でわき腹の傷を突きやがった。
「うっ!…ぁ…っ……!」
苦しむ俺を見て嬉しそうに笑うガキが視界の端に映る。
子供が虫や小動物を虐めては楽しんでいる。そんな光景をよく見るだろう。俺は今、その虐められている虫の気分だ。
「っう…あ……っのクソガキ!!……どーいう教育受けてんだっ!お前ぇの親の顔が見てぇぜ!!」
「へー、そんなコト言っちゃってもいいんだぁ」
「あぁ?」
「ここの森、夜になると人喰い狼が出るんだ。それにさっきおじさんが殺した人達の仲間が来るんでしょ?ずっと見てたから知ってるよ」
勝ち誇ったように俺を見下ろす。
なんてガキだ…!!
「………」
「ねぇ、どうするの?そうだねぇ、ごめんなさいって言って謝れば助けてあげないこともないかな」
「………」
「さっきの人達の仲間と、狼。どっちが先におじさんを見つけるかなぁ」
「………………ごめんなさい」
悔しさと情けなさでいっぱいの俺の横
で、クソガキがニタニタと笑ってやがる。
ふとその顔が、誰かと被った気がした。
「おじさん、プライドないの?まぁいいや。よくできましたってね」
いい子いい子と頭を撫でられる。
なんという屈辱。
今まで生きてきた中で、これ程の屈辱感じたコトが今まであっただろうか。
いや、無くは無いかもしれない。
あの腹黒軍師や…あと誰だっけか。
思い出そうとするのに、目の前に霧がかかったように思い出せない。
誰だ。
大切な奴だったはずだ。
誰だ。
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