校舎から、今日一日の終わりを告げる最後のチャイムが鳴り響いた瞬間、さっきまであった静けさはどこに行ったのかと言う程に、校舎内はこれから部活に行く生徒や帰宅する生徒達のざわめきで満たされた。 そんな中を、いつもなら放課後チェックと言わんばかりに風紀の二文字を翳(かざ)し(多分)罪のない生徒をトンファーの餌食にする雲雀が、さっさと帰って行こうとする姿が見えた。 それは随分と珍しい光景で、何かあったのかと皆自分の目を疑うくらいだったのだが。 後からついて来る金髪の外人を見た瞬間、その疑いも見事に霧散し、皆が見ない振りを決め込み始めた。 触らぬ神に祟りなし。 金髪の外人が関わっている時の雲雀は、まさにその言葉が当て嵌まるのだ。 「きょーやっ!だから、な?帰る道中でもいいんだって」 「しつこいよ。僕は今日はもう帰りたい気分なんだ」 貴方に付き合ってる暇なんてない。と言う雲雀の手をディーノは後ろから強引に掴むと、「じゃあ俺が送ったっていいじゃねーか」と言った。 「……よくない」 「何でっ?!」 否定した雲雀に、ディーノは慌てる。 「あっ!もしかしてアレかっ?俺が運転してるトコなんて一度も見た事ないからかっ?」 ディーノの言葉に、雲雀は答えなかった。理由はそれもあったが、大体にして部下がいない所だとてんでダメ人間になるディーノが、安全運転できる筈がないのだ。 (まだ死にたくはないし) いい加減トンファーで沈めようかと考えていた雲雀に、ディーノが「それなら心配ないって!」と言う。 「俺今まで無事故無違反だから!」 それがそもそも信用ならないと、何故目の前の外人はわからないのだろうか。 雲雀はうろんげに見つめながら、 「いい加減にしてよね」 ついにトンファーを繰り出した。 「っぶな!…何すんだよきょーや!」 「貴方がしつこいのがいけな…っ?!」 トンファーをかわしたディーノが、素早く鞭で雲雀の足元を掬う。態勢を崩した雲雀は、そのままディーノの腕の中に落下し、気付いた時には抱えられたまま校門に寄せられた外車に乗せられていた。 正に早業としか言えない行動に、雲雀は何をするんだと運転席に座ったディーノをまず殴った。 「っいて!きょーや、諦めろって」 そう言いながらエンジンをかけて発進させたディーノに、雲雀は殴るんじゃなくてさっさと降りればよかったと後悔する。 |