君をご招待 十二月二十四日。 世はクリスマスに沸き返り、町はクリスマスを楽しむ人達で溢れてる。 僕はそんな人達の間を縫うようにして、帰路に向かった。 クリスマスなんて、物心ついた時から祝った事がない。 だから知識はあっても体験はなくて。でも羨ましいとは思わなくて。 そんな事をつらつらと考えながらアパートの前に着くと、 「よ、」 何故か、黒崎がいた。 「……何で、ココに?」 吃驚する僕に、黒崎は「どんだけ人を寒空の下で待たせんだ」と言ってきて、些かムッとした。 「今日、君と約束事もしてないし、ましてやここで集合なんて事も聞いてない」 そっちが勝手に待っておいてなんて言い草だと僕が言えば、黒崎は唇を尖らせて、「仕方ないだろ」と言ってきた。 「?」 「お前んチ知ってるけど、電話番号とか知らねーし」 連絡の取りようがないと言う黒崎に、僕はなら一体何の用なのかと尋ねた。 そうしたら、 「ウチのクリスマスパーティに、招待しに来たんだよ」 そう言って。僕の返答も待たずに、黒崎は僕の手を掴んで、歩き始めた。 「黒崎っ?」 僕は一言も行くだなんて言ってないし、第一黒崎は僕の返答や抵抗など最初から無視の方向で、連れていこうとしている事が見え見えだ。 何で僕なんだと、他の人も誘っているのなら、その人達と楽しんで、僕なんか放って置いた方がいいんじゃないかと言ったのだが、黒崎はやっぱり聞く耳を持たない。 「黒崎っ!」 少し強い口調で、黒崎を呼ぶと、漸く。黒崎は足を止めて「何だよ?」と振り返って来た。 その時の黒崎の顔には、面倒臭いとデカデカと書いてあって、僕はその態度は何だと憤然とした。 そうしたら黒崎は慌てて、 「俺と…俺の家族とクリスマスを祝うのは、嫌か?」 さっきの態度とは一転、僕の顔を心配そうに覗き込んでくるから。 「僕がいたら、邪魔じゃないのか?」 そう言えば、黒崎は「俺は石田とクリスマスを祝いたいんだけど」と返して来て、吃驚した。 理由がわからない。 「理由は必要なのか?」 僕の呟きに首を傾げた黒崎は、未だ訝しむ僕に、「だよなぁ」と頭を掻いた。 当たり前だ。理由は必要に決まってる。訳がわからない。 僕が黒崎を睨めば、 「もう少し、わかりあえないか?そうじゃなくても、仲良くなれないかなって。コレを通じてさ」 そんな告白めいた事を言うものだから、僕は自分でも頬に熱が上がるのを感じて、何て恥ずかしい事を言うんだと僕は黒崎をまじまじと見ると、黒崎はこれでいいだろと言わんばかりに笑って来たから。 もう僕は、降参する他なかった。 「じゃあ、まずは君の妹達へのプレゼントを買わせてくれ」 僕の言葉に、黒崎は自分のはないのかと聞くのに、僕が来る事が君の望みならそれで十分じゃないかと言えば、黒崎はポカンとした顔をして、それから直ぐに笑った。 何か僕はおかしい事でも言っただろうかと思い返すけど、やっぱり何もなくて。 「じゃあ、行こうか」 促されて、僕は。その日初めてクリスマスを体験したんだ。 【終】 そんな訳で強引招待されました リクは黒崎家のクリスマスパーティに招待される石田さんでした ひょう丸様、如何でしたでしょうか? |