甘い囁きT
□運命 彼女の過去
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―彼女の過去―
大きく息を吸ったシェイラ。
その手は微かに震えている事が見てわかる。
「…ぉい」
「…ははは。ダメだ、この話は緊張する」
痛いぐらいに伝わるシェイラの緊張にアレンの過去の重たさを感じとった3人。
再び紅茶を口に含み、深い息を吐いたシェイラは静かに話だす。
「私の親父は昔、アレンの養父であるクロスと共に仕事をしていたんだ。だからクロスとは昔から繋がりがあった。アレンに出会ったのもクロスを通じてから」
遠い昔を見る様にシェイラは話出した。
「…幼い頃のアレンはかなり可愛いかった。まぁ、今も可愛いんだがな。小さい体で私の後ろを必死に付いて来て…屈託のない笑顔で私の名前呼んで…無邪気に笑って。甘えん坊で泣き虫で」
微かに微笑むシェイラ。
「…でもそんな"子供らしい"になるのには3年の時間がかかった」
「…どう言う事?」
「…私がアレンと初めて会ったのは…病室のベットの上。その時のアレンに意識はなくて、体は全身大火傷。全身を包帯が被っていた」
「「「なっ!!」」」
「沢山の機械に囲まれてあいつはなんとか生きている状態だった」
「「「……………」」」
「あの時、『アレンは生きて3日。もし生きれたとしても意識が戻る事はない』と医者に言われていた。……どうしてこんな小さな奴がこんな怪我を?不思議で堪らなかった。そして私はクロスに聞いたんだ。そしたらクロスは……」
シェイラはギュッと手を強く握り、見えない何かを睨みつける様に目を細めた。
「『親父に殺されかけた子供だ』ってな」
「お父さんに!?」
「…ぁあ」
「殺されかけたって…」
「あいつ…アレンの親父は自分の家に火をつけてアレンを殺そうとしたんだ。アレンを部屋に閉じこめて、自分はさっさと外に逃げて」
「「「なっ…!!」」」
「あいつは…アレンを憎んでいた。…いや、アレンに残る面影を憎んでいたんだ」
「面影?」
「…アレンの母親はアレンを生んでから直ぐに行方をくらました。理由はアレンの親父の浮気。…それが許せなく、アレンの母親はまだ幼いアレンを残し行方をくらました」