甘い囁きT

□運命 甘い気持
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王子様に恋した人魚姫
叶わない恋
痛む足
何を得た?

「…運命の恋」

人を愛して初めて知る
愛しさ、苦しさ、悲しみ
そして言い表せない幸福

得たのは
痛みと引き替えに
得たのは愛する事

自分の命と引き替えに
得たのは他人の幸せを
願える心

「…恋から愛に変わった瞬間」

それ程王子様を思った証
誇るべき気持


…やっぱり恋愛の曲は
奥ゆかしいな
経験した事のない事を
詞にするなんて
僕には無理だ


「…恋をする事なんて…僕にはあるのかな?」

だって…僕は…
僕は…僕は…

『消えろ!』

「っ!!!」

『近付くなクソが!』

『死ね』

「やっ…出て来ないで」

『…殺してゃる!』

「っぃやぁぁあああ!」

アレンは目を見開き叫び声を上げた。

「!!アレン!?」


その叫び声を聞き付けたシェイラが扉を開け中に入って来る。


「ぃやぁああぁあああ」

部屋の中では自分の頭を抱え叫び声上げるアレンの姿があった。


「どうしたアレン!」


「いやっ!っ…!」

シェイラはアレンに駆け寄り肩を揺らす。

アレンの瞳からは涙が溢れ瞳孔は開いている。

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」

「アレン!?」

「ごめんなさい!」

「ッチ!アレン!大丈夫だ!あいつはいない!お前を傷つける奴はいないんだ!」

「ごめんなさいごめんなさい!」

ひたすら何かに謝り続けるアレンをシェイラは優しく抱きしめ背中を摩る。

「アレン!落ち着け。大丈夫だ…大丈夫だからな?もうあいつは居ない」

「…本っ…当?」

「ぁあ本当だ。…もう誰もお前を傷つけやしない。」

「っ…シェイ…ラぁ」

「大丈夫だアレン。怖かったな。もう大丈夫だからな」

「ぅっん…ひっ…」

「アレン…」

嗚咽するアレンの背中を優しく擦り頭を自分の肩に引き寄せた。

自分の腕の中で肩を震わし泣くアレンにシェイラは眉を寄せる。


(ッチ…いつまでアレンを苦しめる気だ…)




 
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