短編・番外編
□傷痕。
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潤夜は、しとしとと雨の降る窓の外を見て、心配そうに声を掛ける。
「雨だな……。傷痕、痛まないか?」
龍牙の前髪に隠れた左目の古傷。
それは、今日みたいな雨の日には、痛み出す事もある。
「気にする程じゃない。」
龍牙はあくまで大丈夫だと主張するが、その表情は少し曇っている。
「ホントか……?」
傷痕を隠す為に片側だけ伸ばした前髪。
潤夜は龍牙に近寄ると、その前髪をかきあげ、指が触れるか触れないかの距離で傷痕を辿る。
「あぁ……。」
龍牙はそっと瞼を閉じた。
「我慢、するなよ……?」
心配を募らせる潤夜。
「分かってる。」
睦言の様に甘い空気の中、交わされる会話達。
それは、生まれてからの長い年月を共にした2人だからこそ、醸し出しえるものだった。
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