Whearabouts.
□再会。
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――2月初め。
もうすぐ高校2年生になる鈴木 榎奈(すずき かな)。
しかし、彼女は進級どころではなく。
精神的に追い込まれていた・・・。
* * *
――夕暮れ。
彼女は学校が終わってから、家にも帰らず、ずっと人気のない公園で泣き続けていた。
(っ、どうしてっ・・・?!どうして、こんな・・・・・・。)
もう、何かを考えることも出来ずにいた。
それほどに、このことは彼女にとって大きなものだったのだ。
(私に、大切なものを持つことは許されないとでも言うの・・・?!)
榎奈は絶望の淵に追い遣られていた。
と、その時、声が、聞こえた。
「・・・・・・榎奈?」
聞き慣れた、声。
しかし、わずかに違和感を感じさせる、その、声。
彼の声を聞いたとたん、自分が安堵するのを感じつつ、反対に恐怖も生まれ、一瞬体が強張ってしまう。
「榎奈?!お前、何でこんなトコに・・・?!しかも、制服!もしかして、家に帰ってないのか?!」
もうすぐ、日が落ちる。
心配、驚き、焦り・・・様々な感情が渦巻いているのが分かる。
しかし、そこに負の感情はないのだろうか・・・。
彼女と会いたくない。とは、思わないのだろうか?
榎奈は座ったまま、そろそろと顔を上げる。
すると、そこにはトレーニングを兼ねているのだろう、ウィンドブレーカーを着、犬を連れている、岡本 悠斗(おかもと ゆうと)の姿があった。
「悠斗・・・・・・。」
それは、久しぶりに見た顔だった。
無意識のうちに彼の家に近い、この公園に来たのは、再び彼と会えることを期待していたからなのだろうか・・・。
彼女を追い詰めた原因の1つである、彼と・・・・・・?
「榎奈、どうしたんだ?何が、あったんだ・・・?」
心配そうな顔をして、榎奈のほうに近づいてくる。
「とにかく、寒いだろう?コレ、着てろよ。」
彼女がコートも着ていないことに気づき、そっと、彼女の肩に自分の着ていたウィンドブレーカーをかける。
「・・・うん。ありがとう・・・・・・。」
まだ、彼を見るのはつらかった。
彼の姿を視界から外すため、足元に近寄ってきた、まだ子供のコーギーに手をのばす。
悠斗もそのことに気づいたのだろう。
手をのばして届くか届かないか、ギリギリの距離をとる。
しばらく、気まずい沈黙が横たわる。
先に口を開いたのは悠斗の方だった。
「・・・ごめん。俺、いない方がいいよな・・・。お前の気持ち考えずに、声、かけちまって・・・。」
そう言うと、いくぞ。と、コーギーのリードを軽く引っ張り、榎奈に背を向け、歩き出そうとした。
『また、離れていく・・・・・・。』
榎奈に、とてつもない恐怖が襲い掛かった。
「っ!待って!」
恐怖を感じた瞬間、頭で考えるより先に体が動いていた。
立ち上がり、彼を引き止めていたのだ。
「・・・榎奈・・・・・・・・・?」
彼女の切羽詰った声と表情とで、悠斗は榎奈が相当追い詰められているのだと、気づいた。
「おねがっ・・・独りに、しないで・・・っ。今、だけでも・・・いいから・・・・・・。側に、いて・・・っ。」
嗚咽を繰り返し、うつむく。
悠斗はリードを近くの木の幹に引っ掛け、足早に榎奈の方へと駆け寄る。
「ごめっ・・・。わがまま、言ってるのは、わかってる・・・。けど、今だけは・・・・・・今、だけは、お願いっ・・・・・・。」
「うん・・・。大丈夫。榎奈の気が済むまで、ここにいる。」
ゆっくりと、彼女の肩を抱き、ベンチに座らせる。
そして、今度は自分も、その隣に座る。
「大丈夫。ここに、居るから・・・。」
悠斗は、榎奈が落ち着くまで優しく『大丈夫だから。』と、何度も、繰り返した。
continue...