SSS
□恋ごころってやつは
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クロロが彼女を連れてやって来た。
鍵閉めてたのに勝手にピッキングで開けて「コーヒー。こいつの分も」って言うところまではまだいい。だっていつものことだから。
だけど二人を見た瞬間に俺の頭脳が弾き出した分析結果によると、俺にとって物凄く都合のよろしくないことが三つもあるらしい。
一つ目。クロロが連れて来た女性は、俺が一年くらい前に付き合っていた所謂“元カノ”というカテゴリーに分類される人物であること。
(つまり会うのも一年ぶり。少しだけ髪が長くなった。それ以外はあまり変わっていない。当たり前だけどさすがに誕生日にプレゼントした指輪は付けていなかった)
二つ目。別れた原因は、俺の浮気であること。
(男は浮気する生き物なんだよって言ったらビンタされた。今考えたら馬鹿だろあの時の自分。愛を確かめるのには逆効果だ)
三つ目。しかし俺はまだ彼女に未練があるらしいということ。
(彼女をみた瞬間、今まで一定のリズムを刻んでいた心臓が急に忙しなく動き始めた。ついでに顔も熱くなってきた気がする。ついでのついでに言うと、クロロとのツーショットをみて胸が痛くなった気もする)
そんな訳で俺は固まっているんだけど、同じく固まっている彼女を見たクロロが知り合いか?って聞いてきたから思考を復活させなければならないようだ。
彼女の顔を盗み見た。
困ったように視線をさまよわせている。懐かしい。愛しい。
同時に別れを告げる時の彼女の儚い笑顔が、鮮明に思い出された。
「あー……いや、ちょっとね、昔……」
昔、俺が傷つけた女です。
恋ごころってやつはちゃんと葬ってあげないと復讐してくるのです
2008 10/31
とことんシャルをかわいそうな奴にしたい、そんな自分。