大河 短編
□1秒を惜しんで
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照れながら手を差し出してきた大河。
普段はそんなことしないから、私も恥ずかしくなった。
太陽が沈みかけた帰り道。
伸びたふたつの影がちょうど真ん中で手を繋いだ。
「大河」
「何」
「嬉しい」
「何が?」
「手」
「…ふーん」
顔を逸らしながらも、繋いだ手を強く握ってくれた。
もう少しだけこうしていたいから、今日は遠回りして帰ろうよ。
そう言ったら、無表情のままこっちを向いていつもとは違う道を歩き出す。
いいよ、って、合図。
一緒に居る時間。
1秒だって、大切にしたい。
END
2007/8/19
春瀬琴音
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