冬獅郎 短編

□つよがり
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幼馴染。


幼少の頃から家族同然に育ち、ただの友人よりも深い絆を持っている。


私にはそれがどれ程のものなのかわからない。
そんな関係の人間がいない立場からしてみれば、
家族>幼馴染≧友人
といったところだろうか。


問題なのは、彼にとって私という「恋人」が方程式のどこに入って、何より大なりで何より小なりなのかということ。


けれど今は、もうそんなことを気にすることもなくなってしまった。


「日番谷くん!」
「…また来たのかよ、雛森」


この光景に見慣れたせいだ。






【つよがり】






付き合い始めて間もない頃は、確実に嫉妬していた。
彼女が、私の知らない冬獅郎を知っていて、私よりずっと冬獅郎の傍にいたという事実は消せない。
いくら「これからたくさん知ればいい」「これからずっと傍に居ればいい」と思ってもなくならない嫉妬。


私以外の女と楽しそうにしないでよ。
私のこと好きだって言ったじゃない。


そんなことを思うのがくだらなくなったのは、いつからだったろう。


恋人である私にしか見せない彼の一面を知ったし、行き着くのはいつも、私は「恋人」で彼女は「幼馴染」だということで。
それは、私と彼女の決定的な違いだった。


「家族愛」に似たようなものと「愛情」は別のもの。






「でね!そしたら藍染隊長が…」
「いい加減その藍染隊長のところに戻れよ」
「もー!!ちょっとは聞いてくれたっていいじゃない!」
「ちょっとどころじゃねーだろ!お前いつまで居る気だよ!?もう軽く2時間は経ってんだぞ!」


こんなのは日常茶飯事。
毎回毎回嫉妬をしていたら、こちらの身が保たない。
「またやってる」
この程度の感情が一番楽だ。


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