冬獅郎 短編
□夏の雪
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「一護―!教科書返せ!!」
高一の夏。といってももう9月で、すぐに秋がやってくる。
制服はまだ夏服だった。冬の重くて暑苦しい制服よりも動きやすいこっちの方が好きだ。
「………あれ?」
「一護ならどっか行ったよー」
毎日毎日騒がしいクラスで、そこの中心に居るのはいつも一護だった。
一護とは小・中と同じ学校で、でも幼馴染と言える程関わっていたわけじゃない。
顔見知りというのもしっくりこなくて、平たく言ってやっぱり友達なんだろう。
そんな彼のクラスは、個性の強い人がたくさんいて。
確かに鬱陶しくもあったけど、嫌いじゃなかった。
ただ、変な噂も耐えなくて。
…例えば、最近3組に転入生が5人来たとか。
ついこの間、転入生が1人来たのに、どうなってるんだあのクラスは。とか思っていた。
だって刺青入りの赤髪に、木刀持ったハゲ、妙な眉毛のオカッパに、有り得ないくらい巨乳のお姉さん。
極めつけは銀髪の小学生だ。
どうやらその転入生騒ぎの中心にいるのも一護で、あまりにも不自然なこの出来事を私は遠巻きで見ているだけだった。
クラスが違うから関わるも何もないけれど、その後から来た転入生組は特に授業を受けたりはしていないらしい。
どこまでも変な集団だ。一護を含めて。
最初から、そこまで関わっていたわけではないけれど気になった。
どう考えても可笑しい事実だ。
けれど所詮は違うクラス。気にはなるけれど事情を知るには遠すぎた。
この学校に、一護に、何が起こっているのか何もわからないからずっともやもやしていた。
そんな時に授業を受けるのは気が引けて。
サボっても特に何も言わない先生、つまり問題の3組の先生の教科の時間、私は授業を抜け出した。
やってきたのは定番の屋上。
教室の物より何倍も重い扉を開く。
「……………」
そこには先客がいた。
「……小学生…」
「誰が小学生だ」
銀髪の小学生。本人は真っ先に否定したが(というより立派なツッコミ)実際見てすぐにわかった。
「…何してんの。」
「…別に」
取っ付きにくそうな人だった。
同い年だと言い張る彼の隣に自然な形で座ると、彼が携帯を手にしているのが目に入った。
「あんたは授業受けないの?」
「…あぁ。」
多くを語らないその人は、何も言わず隣に座った私から目を逸らし携帯を弄り始めた。
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