過去拍手

□気にしてる
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国立中央図書館。
ここで働いている私は、最近気になる人がいる。


三つ編みにした金髪に赤いコート。
彼が、巷で有名な鋼の錬金術師、エドワード・エルリックだというのは容易に理解出来た。


私は梯子を使ってかなり上の段の本を整理していたのだけど…通路を挟んで右側にある本棚の前に彼がいる。
ここ数日図書館に入り浸っている彼。
話をしたこともないが、今彼は自分と戦っている。たぶん。


本を整理しながら横目で気にして数十分。
彼はぴくりとも動かない。
腕を組んで本を睨んでいる。
顎は引いているのだが、その目線の先は上の方だ。


…彼の背では届かない。


「……………」


あぁ、そうか。とまさに頭の上で電球が光って。
私はゆっくり梯子から降りた。
視界に入る彼がこちらに目だけ向けているのがわかる。
背を向けて、そこから離れた。


本棚の影から彼の様子を伺うと、組んでいた腕を解いて梯子へ向かっていく。
肩を落とし小さく溜息を付きながら梯子を移動させ、目的の本を漁り始めた。












次の日。
彼はまた図書館へやって来た。


受付で貸し出している本をチェックしていると、彼はこちらへやってくる。
静かな図書館に彼の足音が響いた。


「…あのさ」
「はい」
「…昨日は…ありがとな」


目を合わせず、彼の表情は長い前髪に隠れている。


「何のことでしょうか」


とびきりの営業スマイルを放って、私は言う。


「…………、な…何でもねぇ!」


顔を真っ赤にさせて、思い切り踵を返して本棚へと向かっていった。
その背中が「畜生!」と叫んでいる。


「…………」


私は小さく笑った。
というより噴出した形に近い。






鋼の錬金術師、エドワード・エルリック。
天才と謳われる最年少国家錬金術師。
世間の注目を浴びている彼だが、その彼が「背が低い」のも有名。
それを彼が尋常でない程、気にしているのも。


そして私は今日も、彼の近くに梯子を用意する為、彼の行動を気にするのだ。




END


2007/01/27
図書館に行った時に思いついたネタ。
エド…ちょう可愛い。
そして図書館のお姉さんに恋しちゃいなYO!なんて。

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