過去拍手

□風邪
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「風邪ぇ?」
「…うん。久しぶりに来てくれたのに、ごめんね」


そう。久しぶり。
仕事で北の方へ行って、少し恋人が恋しくなったりしたから帰ってきてみれば、これだ。


「季節の変わり目って、弱いんだよねぇ」
「ふーん。大丈夫なの?」
「うん。」


鼻の頭が少し赤い。
ちゃんと暖かくしているのかな。
ご飯は食べたかな。


人間は、何て脆いんだろう。


「エンヴィー、仕事…平気なの?」
「平気だよ。風邪引いてるなんて知ったら、仕事どころじゃないしね」


そっか、と照れ臭そうに笑った君の笑顔が好き。
風邪を引いたくせに、何か暖かい飲み物を出そうとしてくれた君の優しさが好き。
今日くらい、いいよと言ってそれは断ったけど、いつも君が煎れてくれるコーヒーも好き。


でも、手は出せないなぁーなんて、椅子に座る。
そっと額に手を伸ばすと、熱が伝わってきた。


「エンヴィーも、そんな格好じゃ風邪引いちゃうよ」
「平気だよ。僕はそんなに弱くないもん」


それに、この格好気に入ってるし。


「今日は、ずっとついててあげるから。」


そう言うと、嬉しそうに笑った。


君のために冷やしたタオルを持ってきたり、着替えを手伝ったり(ムラムラしたけど、そこは抑えた)、慣れないことはするもんじゃないなと思ったけど、看病のかいがあって次の日には熱も下がっていた。


「ありがとう、エンヴィー」
「どういたしまして」


お礼を言われるのも慣れていないけど、何だか胸の辺りが暖かくなった。




2006/09/19
春瀬琴音


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