過去拍手

□花火
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「…暑い。」
「暑いな。」
「暑いよ。」
「……欝陶しいだろ、そういうの。」
「でも暑い。」


窓を開け放った部屋の中。いくら夜だといっても気温はあまり下がってくれない。機械鎧も熱を持ってしまって、隣にいる女よりオレの体温の方が高いはずなのに…こいつは…。


「…暑い。」
「……。」
「暑いよ〜。」


オレは欝陶しいと言ったはずだ。好きだと告白したのはオレからだが、ここまで来たらいくらなんでも…。


「エド〜」
「あー!!もう煩せぇんだよ、お前は!!顔貸せ!!」
「………え…何、怒っちゃった?」


ドガッと激しい音を立てて扉を開いて外に出る。
あいつもちゃんと着いてきてるみたいだ。足音で確認する。


「…なんで外かな…暑いって言って…」


あいつは何か言ってるみたいだが、構わずその辺に落ちている枝を広い集め地面へ落とした。


「ねぇ…」


後ろでまだ何か言ってる。暑さで答えるのも面倒だ。黙って見てろと背中で表し両手を打ち鳴らす。


パンッ


庭に青い閃光が走る。
四方に散った青の中心から赤い光が空を切って駆け上がった。


どーん!!


錬成は成功。見事なまでの大きさの花が空を飾った。振り向いて彼女の様子を見ると空に満面の笑顔を向けていた。


どうやら機嫌は直ったようだ。別にオレが何かしたわけではないけど。


「…これなら文句ないだろ?」
「うん!」


さっきまでの欝陶しさはなくなった。二人で笑い合ってたまにはこんな暑さも悪くないと、思う。




その後何度も花火を錬成させられたのは言うまでもない。



END

春瀬琴音


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